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女性間のマタハラはなぜ深刻化していくのか(下)

「出産後もバリバリ働いている女性の存在がネック」と話す時短女性社員

杉浦由美子 ノンフィクションライター

 前回は、「資生堂ショック」で表面化した職場における「子どもがいる女性といない女性の対立」について書いた。子育て中の女性だけがシフトの選択で優遇されるのは、不公平だという主張を受け、資生堂は時短勤務の販売員にも遅番や週末勤務をするように制度を変えた。

 この「資生堂ショック」から数年経った現在、妊娠出産、子育てを巡る職場での対立で増えているのは、子どもがいる女性同士のものとなっている。

子どもがいる女性上司の増加がマタハラにつながる

 マタハラnet発行の『2015年マタハラ白書』に掲載された調査結果によると、マタハラの被害を与えた相手は、直属の男性上司が53%、直属の女性上司が22%、女性の同僚が18%となっている。3年前のデータであるから、現在は女性上司が増えた分、女性間のマタハラは増えていると推測される。

3人の子どもとテレビに見入る育児休業中の女性。「早く仕事に復帰したい」=2016年8月、東京都武蔵野市拡大3人の子どもとテレビに見入る育児休業中の女性。「早く仕事に復帰したい」=2016年8月、東京都武蔵野市
 ある企業でのことだ。入社したての新人女性が妊娠をしたという。規則では産休や育休は、1年以上就業した社員に与えられることになっている。しかし、この新人は「育休を取得させてほしい。その後は復帰して働きたい」と直属の女性課長職に相談をしてきた。未婚である課長は「迷惑だけど仕方ない」と考え、働き続けられるように尽力すると部下に約束をした。ところがだ。これが子どもがいる50代の女性部長職に伝わると、「馬鹿いうな」と激高し、「辞めさせる」と言い出したという。

 子どもがいる女性ほど、実は部下の妊娠に厳しいという話は取材でよく耳にする。

 未婚既婚にかかわらず、子どもがいない女性は、他者の「妊娠」に意見がいえない。なにか言えば「嫉妬している」と陰口を叩かれる。また、なによりも「妊娠」というもののプロセスを経験していないので、「赤ちゃんってコウノトリさんが連れてくるんでしょ? コウノトリさんが来ちゃったから仕方ないわねえ」と納得してしまう。

 しかし、出産経験者は「この時期は妊娠してはいけないと分かっていたらちゃんと避妊すればいいんだ」ということをちゃんと分かっている。そのため、新人が妊娠したら「非常識だ」と言えるのだ。

マタニティフォトへの嫌悪感

 また、こんな事例もある。

 現在、「マタニティフォト」というものが流行している。妊婦が大きくなったお腹の部分を晒して、写真を撮るのだ。各写真スタジオで対応しているので、実際に見たい方は、ネットで検索してほしい。

 ある有名企業の女性社員(既婚で子どもがいない)はいう。

 「マタニティフォトをフェイスブックのプロフィール写真にしている女性社員がいたんです。 ・・・続きを読む
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筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

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