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紀州のドン・ファン騒動が映す報道のポピュリズム

週刊誌だけでなくテレビ、新聞を巻き込む報道の過熱化

小野一光 ノンフィクションライター

〝紀州のドン・ファン〟と呼ばれていた、亡くなった野崎幸助さん拡大〝紀州のドン・ファン〟と呼ばれていた、亡くなった野崎幸助さん
 “紀州のドン・ファン”こと和歌山県の野崎幸助さん(当時77)が、5月24日に謎の死を遂げ、6月に入ってからの報道が過熱した理由について考えてみたい。

 この原稿を執筆している6月末時点では、和歌山県警は関係各所への家宅捜索や事情聴取を続けているものの、事件としての立件には至っておらず、事件や事故といった結論は出されていない。

 野崎さんが死亡してからの、捜査関係での大きな動きは以下の通りだ。
5月26日、29日に和歌山県警が野崎さんの自宅を家宅捜索する。

 6月2日に和歌山県警が、東京都新宿区にある野崎さんの妻(22)の別宅を家宅捜索し、翌3日には同港区にある60代の手伝いの女性宅を家宅捜索した。

 6日には和歌山県警が野崎さんの死因について「急性覚醒剤中毒」と発表。

 7日には5月6日に急死した野崎さんの飼い犬を掘り起こし、鑑定にまわす。

 20日には和歌山県警が野崎さんが経営する酒類販売会社を家宅捜索。

 22日には野崎さんの飼い犬から覚醒剤反応が出なかったことが判明する。

 さらに28日には酒類販売会社の内部が、会社関係者によってメディアに公開され、従業員が改めて和歌山県警に話を聞かれていることが明らかになった。

 こうした流れを含めて言えることは、まずなによりも死亡した野崎さん自身が、世間に関心を持たれる話題の人物だったということだ。

 彼は『紀州のドン・ファン 美女4000人に30億円を貢いだ男』、『紀州のドン・ファン 野望篇 私が「生涯現役」でいられる理由』(ともに講談社+α文庫)の著者であり、これまで女性のために多額の現金を惜しげもなく注ぎ込む生活を公言していた。そうした人物が55歳下のモデルの女性と結婚して、わずか3カ月後に謎の死を遂げたというのだ。それだけでも充分、世間に関心を抱かれる出来事である。

 さらにはその新妻が東京に別宅を持ち、それに加えて野崎宅での手伝いの女性も東京に自宅があるという点や、両者の人物像が明らかになっていない点なども、関心の度合いを高める要素となった。

 そして決定的だったのが ・・・続きを読む
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筆者

小野一光

小野一光(おの・いっこう) ノンフィクションライター

1966年、福岡県北九州市生まれ。雑誌編集者、雑誌記者を経てフリーに。「戦場から風俗まで」をテーマに、国際紛争、殺人事件、風俗嬢インタビューなどを中心とした取材を行う。著書に『完全犯罪捜査マニュアル』『東京二重生活』『灼熱のイラク戦場日記』『風俗ライター、戦場へ行く』ほか。最新刊は尼崎連続変死事件をルポした『家族喰い-尼崎連続変死事件の真相-』。

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