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「強気で行くぞ、ビビらせんるんだ」と西野監督

W杯ベルギー戦前に強い言葉で選手を奮起させた指揮官は退任の意向

増島みどり スポーツライター

ベルギー戦後半、先制ゴールを決める原口(左)=2018年7月2日、ロシア・ロストフナドヌー拡大ベルギー戦後半、先制ゴールを決める原口(左)=2018年7月2日、ロシア・ロストフナドヌー
 日本代表で初のW杯ベスト8進出をかけたベルギー戦前、ロッカーで行われた最後のミーティングで、西野朗監督(63)はこう言って選手をロッカーから送り出したという。

 「強気で行くぞ。アイツらをビビらせるんだ」

 監督が22戦負けなし(FIFAランキング3位)の優勝候補に一歩も引かない姿勢を示した言葉の強さを、長友佑都はこう振り返った。

 「監督が就任してからたくさんの言葉をもらって、そのどれもが印象に残っている。でも強いてあげるなら、ベルギー戦前の言葉だった。負けた今、やっぱり悔しさは込みあげる。でも、やれることは全てやった、そう思える試合にはできたと思う」

 「史上最悪の試合」「世界を敵に回した」「警告数の少なさで勝ち上がった茶番劇」と、ポーランド戦終盤8分間のボール回しに痛烈な批判を世界中から浴びてからわずか4日後、最後まで攻撃的な姿勢を貫き、監督の言葉通り優勝候補ベルギーをビビらせるどころか目の色を変えさせ、観る者の心を激しく揺さぶる戦いで世界中を魅了した。

 3点目を与えたこの試合最後のプレーに西野監督が会見で「あれほどのスーパーカウンター(速攻)を受けるとは」と脱帽したように、日本のCKをキャッチしたGKが陣形の乱れをすぐに見抜いて、デブルイネにボールを手渡してからわずか9秒間の逆転劇。アディショナルタイム4分も迫り延長戦がそこに見えた瞬間、超速攻で日本に留めを刺したベルギーの破壊力こそ圧巻だった。

 あまりに衝撃的な結末は、W杯開幕直前の監督交代から西野監督のもと、急激に再生した日本代表、結果が出せない代表への失望や冷たい無関心からの熱狂、開始3分で退場者が出て勝利したコロンビア戦、2度追いついたセネガル戦の同点、凄まじいブーイングを浴びて16強に進んだポーランド戦と、初出場から20年、6回目のW杯の波乱万丈を象徴する劇的なものだったのかもしれない。

 ロッカーに戻った選手たちはユニホームを脱いで用具担当者に手渡すと皆、裸のまま椅子に座りただただぼう然と動けず、とても話ができる状態ではなかった、と西野監督は明かした。

 「ロッカーを出てここに(記者会見)来る時に、すぐにシャワーを浴びろ、そう声をかけて来ました」

 今大会、死力を尽くした選手たちへの監督の最後の「指示」は、精一杯の優しさだった。選手は監督の最後の指示に立ち上がったという。

歴史は8強のみならず、W杯時計の針を少し進めた大会に

 「善戦しても結局は歴史を塗り替えられなかった」と、選手は悔しい思いを噛みしめているだろう。 ・・・ログインして読む
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筆者

増島みどり

増島みどり(ますじま・みどり) スポーツライター

1961年生まれ。学習院大卒。84年、日刊スポーツ新聞に入社、アマチュアスポーツ、プロ野球・巨人、サッカーなどを担当し、97年からフリー。88年のソウルを皮切りに夏季、冬季の五輪やサッカーW杯、各競技の世界選手権を現地で取材。98年W杯フランス大会に出場した代表選手のインタビューをまとめた『6月の軌跡』(ミズノスポーツライター賞)、中田英寿のドキュメント『In his Times』、近著の『ゆだねて束ねる――ザッケローニの仕事』など著書多数。

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