W杯ベルギー戦前に強い言葉で選手を奮起させた指揮官は退任の意向
2018年07月05日
「強気で行くぞ。アイツらをビビらせるんだ」
監督が22戦負けなし(FIFAランキング3位)の優勝候補に一歩も引かない姿勢を示した言葉の強さを、長友佑都はこう振り返った。
「監督が就任してからたくさんの言葉をもらって、そのどれもが印象に残っている。でも強いてあげるなら、ベルギー戦前の言葉だった。負けた今、やっぱり悔しさは込みあげる。でも、やれることは全てやった、そう思える試合にはできたと思う」
「史上最悪の試合」「世界を敵に回した」「警告数の少なさで勝ち上がった茶番劇」と、ポーランド戦終盤8分間のボール回しに痛烈な批判を世界中から浴びてからわずか4日後、最後まで攻撃的な姿勢を貫き、監督の言葉通り優勝候補ベルギーをビビらせるどころか目の色を変えさせ、観る者の心を激しく揺さぶる戦いで世界中を魅了した。
3点目を与えたこの試合最後のプレーに西野監督が会見で「あれほどのスーパーカウンター(速攻)を受けるとは」と脱帽したように、日本のCKをキャッチしたGKが陣形の乱れをすぐに見抜いて、デブルイネにボールを手渡してからわずか9秒間の逆転劇。アディショナルタイム4分も迫り延長戦がそこに見えた瞬間、超速攻で日本に留めを刺したベルギーの破壊力こそ圧巻だった。
あまりに衝撃的な結末は、W杯開幕直前の監督交代から西野監督のもと、急激に再生した日本代表、結果が出せない代表への失望や冷たい無関心からの熱狂、開始3分で退場者が出て勝利したコロンビア戦、2度追いついたセネガル戦の同点、凄まじいブーイングを浴びて16強に進んだポーランド戦と、初出場から20年、6回目のW杯の波乱万丈を象徴する劇的なものだったのかもしれない。
ロッカーに戻った選手たちはユニホームを脱いで用具担当者に手渡すと皆、裸のまま椅子に座りただただぼう然と動けず、とても話ができる状態ではなかった、と西野監督は明かした。
「ロッカーを出てここに(記者会見)来る時に、すぐにシャワーを浴びろ、そう声をかけて来ました」
今大会、死力を尽くした選手たちへの監督の最後の「指示」は、精一杯の優しさだった。選手は監督の最後の指示に立ち上がったという。
「善戦しても結局は歴史を塗り替えられなかった」と、選手は悔しい思いを噛みしめているだろう。
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