杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター
1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。
佐野太被告の子どもは文武両道の優秀な若者 その子をなぜ裏口入学させたのか
一連の文部科学省の官僚たちの汚職事件における、東京医科大入試での不正は、医学部の裏口入学の存在を公にした。しかし、一記者として感じるのは、「面接試験が伴う入試において100%の公平性なんてあるのかな」ということだ。AKB48のアイドルは中堅大学のAO試験に落ちるのに、難関大学の試験には受かる。中堅大学は面接官が女性であることが多く、難関大学では男性が面接官であることがほとんどだからだ。おばさんは女のアイドルに厳しく、おじさんは甘い。そんなことで入試の合否が決まる。
医学部の入試は、1次試験で学力試験をして足を切り、2次で面接や小論文の試験をする。
1次試験の配点は公開されているが、2次試験はそうではない。ブラックボックスの2次試験でなにをするかといえば、大学にとって、都合がいい受験生に加点するのだ。マークシートの学力試験と違って、面接や小論文の点数は調整できる。
この2次試験があるために、医学部受験では女子は不利になる。医学部経営は実習が多いのでコストがかかり赤字に陥りやすい。それでも経営を続けるのは、医局員の確保のためだ。ようは入試でありつつ、系列の病院で働く医師の採用の場でもある。
そうなると、結婚や妊娠で医局を辞める可能性が高い女子は敬遠されるのだ。合格のボーダーライン上に男子と女子が同点でいると、男子を優先的に合格させることが起きてくる。しかし、その女子に大学側とコネクションがあれば別だ。合格させてもらえる可能性がでてくる。
現在、裏口入学があるのは、このボーダーライン上にいる受験生が対象になるケースだろう。
中高一貫の進学校のベテラン教員がいう。
「1990年代ぐらいまでは、医学部に進学するのは、ガリ勉かお金持ちの子でした。後者は学力がないけどお金で医学部に入る。しかし、今は私大の医学部も相当勉強した子じゃないと入れません。裏口入学があるとしても、全然学力がない子は対象になりませんよ」
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