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受動喫煙対策強化の改正健康増進法に期待する

「例外のない屋内全面禁煙」への流れをつくろう

大和浩 産業医科大学 産業生態科学研究所 教授

 受動喫煙対策を強化する改正健康増進法が7月18日、国会で成立しました。日本の受動喫煙対策の歴史を振り返りながら、この法律が持つ意味を考えてみたいと思います。

日本で最初の受動喫煙防止規制

 1990年代、受動喫煙によって吸わない人でも肺がんのリスクが高まる、という健康被害について社会的な関心が高まり、2003年5月1日に健康増進法が施行されました。受動喫煙の防止を規定した第25条は以下の通りです。

学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店、その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない

 法律施行の当日、全国の郵便局や銀行の窓口、関東の私鉄から一斉に灰皿が撤去されました。学校や病院では敷地内禁煙が進み、官公庁や公共施設、鉄道車両、一般企業の執務室の灰皿も徐々に撤去、あるいは、喫煙室として隔離され、公共空間で受動喫煙に曝露される機会はかなり減りました。ところが、遅々として進まなかったのが飲食店の受動喫煙です。

世界標準である屋内全面禁煙は五輪大会の必要条件

 日本でタバコ対策が停滞していた2000年代、世界保健機関(WHO)が提唱し、2005年に発効した「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」により、諸外国では値上げや写真入りの警告強化、禁煙治療、メディアキャンペーンなど包括的なタバコ対策が進みました(図1)。

拡大図1. 「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」の主要な内容

 第8条で飲食店等のサービス産業を含む屋内全面禁煙化が求められており、図2のように2016年までに55カ国、アメリカは30州が屋内全面禁煙となっています。

拡大図2. 諸外国の法規制による屋内禁煙化の状況

 屋内禁煙化の動きは、2010年にWHOと国際オリンピック協会(IOC)が交わした合意文書「タバコのないオリンピックの開催」によりさらに厳しくなってきました。ロンドン、バンクーバー、ロシアなど近年の五輪大会はいずれも屋内が全面禁煙の国で実施されていることからも分かります(2018年の平昌大会が開かれた韓国では、法律上は喫煙室の設置は認められていますがレストランはほぼ全面禁煙でした)。

日本にも求められた屋内全面禁煙化


筆者

大和浩

大和浩(やまと・ひろし) 産業医科大学 産業生態科学研究所 教授

産業医科大学卒業(1986年)。 研究内容 ・ 職域の包括的な喫煙対策(建物内・敷地内禁煙、勤務時間中の禁煙) ・ 医・歯学部の敷地内禁煙化、公共交通機関の禁煙化 2006年より現職。多忙な勤労者が運動習慣を獲得・維持する職場環境と指導法の研究。医学博士、労働衛生コンサルタント、日本産業衛生学会指導医。 喫煙・禁煙歴:浪人時代に喫煙を始め、36歳で禁煙するまで7回の禁煙失敗。現在、8回目の禁煙を22年間、継続中。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです