メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

『義母と娘のブルース』産まない母はなぜ面白い?

自分の娘を託すために有能な女性と偽装結婚する父親、荒唐無稽な話はなぜ高視聴率?

杉浦由美子 ノンフィクションライター

 夏のドラマは佳作揃いである。その中でも高視聴率をマークしているのが、『義母と娘のブルース』(TBS系)だ。

『義母と娘のブルース』で主演をつとめる綾瀬はるかさん=2016年2月、東京都渋谷区拡大『義母と娘のブルース』で主演をつとめる綾瀬はるかさん=2016年2月、東京都渋谷区
 原作は桜沢鈴による四コマ漫画。コミックスの発行部数は少なかったが、電子書籍で出すと口コミで広がっていった。妻と死別したシングルファーザー(竹野内豊)が自分の余命も長くないと知る。彼は一人娘を託すために、ライバル企業のやり手女性社員と偽装結婚する。ヒロイン(綾瀬はるか)はキャリアを捨てて、義理の娘のために専業主婦になり奮闘する。荒唐無稽な話だが、原作同様にドラマも多くの人たちの共感を得て、視聴率は初回が11.5%で、その後は11.3%、12.4%、12.2%、13.1%と高い水準で推移している。

実は定番のテーマを扱っている。

 さて、このドラマはユニークなようでいて、実は定番のテーマを描いている。それは「産まない女の母性」である。

 かつて、日本の医療の現場では「出産の痛みを経験しないと母性が育たない」というトンデモな理屈で、無痛分娩を否定することが多々あった。言うまでもなく、母性というのは子供を産んだ人だけのものではない。出産を経験しない女性も母性は持っている。それをドラマでは幾度となく取り上げてきた。

 2010年放送の『Mother』(日本テレビ系)では、虐待される教え子を保護して、連れ去る小学校の女性教諭が主役だった。同年放送された『八日目の蝉』(NHK)は不倫相手の子供を誘拐した女性の逃避行が描かれる。彼女は子供に愛情を注ぎ、育てていく。原作は角田光代の小説で、ミリオンセラーとなった。

 アメリカのドラマでもこの産まない女の母性がしばしば描かれる。レズビアンたちの姿を描いた『Lの世界』では、特定の相手との関係が築けないプレイガールが、幼い異母弟を預かると、急にイキイキとしだす。自身の仕事に前向きになり、弟のために安定した生活を望むようになる。

母と子供が親子になる過程の面白さ

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

杉浦由美子の記事

もっと見る