倉沢鉄也(くらさわ・てつや) 日鉄総研研究主幹
1969年生まれ。東大法学部卒。(株)電通総研、(株)日本総合研究所を経て2014年4月より現職。専門はメディアビジネス、自動車交通のIT化。ライフスタイルの変化などが政策やビジネスに与える影響について幅広く調査研究、提言を行う。著書に『ITSビジネスの処方箋』『ITSビジネスの未来地図』など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
100回を迎えた全国高校野球選手権大会から考えるメディアとアマチュアスポーツ
「夏の甲子園」と呼ばれる全国高校野球選手権大会が第100回を迎えた。15万人以上の現役野球部員(日本高野連調べ)、数倍の人数の家族、数十倍の同校生徒、それらの数十倍の元・高校生たち、テレビ観戦も含めた数千万人のファンが楽しむ国民的風物詩となっている。それ自体は爽やかな記憶としてあらゆる立場から楽しむことができればいいと思う。
筆者からは、この高校野球も含めた日本のアマチュアスポーツ・イベントがメディア企業のビジネスとして支えられている側面、それ自体が“必要悪”であっても支えている事実があることをもって、応援メッセージとしたい。
夏の甲子園については、会場運営と出場校の旅費は朝日新聞社が、球場使用料は甲子園球場の運営主体である阪神電鉄が、それぞれ負担している。朝日新聞は地方大会まで細かく報道する。その見返りとして朝日新聞社は部数増、阪神電鉄は乗客増、を期待する。
それは約100年前、大学~高校野球の人気を見て取って、中学野球(当時)を販売促進のコンテンツとして主催する朝日新聞社が投資~収益の事業としたことにはじまる。甲子園球場は事実上この大会のために阪神電鉄によって後追いで新設された。
この大会開始から9年たって「春の甲子園」が毎日新聞社の事業として始まり、後発の読売新聞社が日米野球からプロ野球に続く流れを事業化したことはよく知られる。
100年以上前の日本で、プロスポーツとして成立していたのは事実上大相撲のみであった。アマチュアスポーツへの支援とメディア企業の収益事業を両立させたモデルのビジネスは、100年たった今、膨大な数にのぼる。