杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター
1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。
伸び続ける百貨店のインバウンド消費 主流は化粧品とエルメスなど高級ブランド
木村拓哉の次女Kōki,の活躍が注目されている。都心でも液晶パネルにKōki,の映像が流され、中国で200万部発行とも言われるの人気ファッション雑誌「紅秀Grazia」の表紙を飾った。また、ハイエンドブランド、ブルガリのアンバサダー(広告塔的な役割をする)にも日本人初で起用された。なぜ、イタリアを代表する高級ブランドが15歳の少女を起用したのか。
正直、日本人消費者の目からすると、首をかしげる抜擢ではないだろうか。木村拓哉の妻、工藤静香はヤンキー文化全盛期の1980年代に、不良っぽいイメージで一世を風靡したスターだった。その工藤の次女とハイエンドブランドはどうもマッチしないという意見もあろう。今回はこの抜擢の理由を分析することで、日本国内のインバウンド消費がいかに勢いがあるかについて考えていこう。
今年、アメリカの高級ジュエリーブランド、ティファニーが好決算を発表した。アジア圏で売り上げ好調で、その中心は日本の店舗である。これを聞いて、首をかしげる人も多いだろう。なぜなら、日本人の感覚だとティファニーは「昔流行ったブランド」だからだ。90年代、ティファニーは日本人女性の憧れのブランドだった。ハート型のペンダント、オープンハートが大流行した。しかし、現在、ティファニーを欲しがる日本人女性はそうは多くない。
日本人は成熟しているので、アクセサリーを買うにしても、ブランド名ではなく、デザインで選ぶ。駅ビルのセレクトショップで3万円も出せば、抜群のデザインで、それなりに高級感があるアクセサリーがいくらでも買えるのだから、そちらに流れていく。
今でも海外の高級ブランドのバッグやアクセサリーを買いたがる日本人はいるが、マニアックな人たちのように思う。感覚がバブルな人かファッションにこだわりがある層だ。もうハイエンドブランドは誰しもが欲しがるものではなくなっている。
しかし、ティファニー以外にも、フランスの高級ブランド、エルメスは日本の店舗での売り上げが好調だとしばしば報道されている。これらのハイエンドブランドの売り上げを作り出しているのは中国人客たちによるインバウンド消費だ。
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