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君たちは猛暑をどう生きるか(下)

エアコンによって汗をかけなくなり、熱中症防止でエアコンに頼る。これはワナなのか

稲垣えみ子 元朝日新聞記者

拡大大勢の人でにぎわうナイトプール=2018年8月14日、東京都練馬区

 「君たちは猛暑をどう生きるか(上)」では、「エアコンなしで猛暑を乗り切った」我が生活の実態をお伝えした。実は、最も暑い日中はカフェでエアコンのお世話になっており、エアコンなしで過ごすのは朝晩だけなのである。全く大したことはない・・はずなのに誰も納得してくれない。皆様「夜も暑い」と主張するのだ・・というところまで書いた。

 なるほど。

 確かに私の実感でも、寝苦しい夜というのが確かにある。

 最低気温が30度近い高温で、さらに風まで止まってしまうとこれはやはりキツい。過去8年の私の実感では、そのような「どうしようもない夜」が年に5日ほど必ずやってくる。これが夏のピークである。だが逆に言えば、その5日さえ耐えきればなんとかなるということでもあり、「季節は巡る」「物事は永遠には続かない」を合言葉にセーシン論でなんとか耐えてきた。

 だが今年はなんたって記録的猛暑である。もしや5日じゃ済まないかもしれない、10日もそんな日が続いたらさすがに寝不足でまいっちゃうヨ・・と不安に思わないわけじゃなかった。だがそんな時、実に耳寄りな情報をゲットしたのである。

 「寝苦しい時は『氷枕』がききますよ」。行きつけのカフェ店主がポツリともらした一言を私は聞き逃さなかった。おお確かにそりゃ気持ちよさそう! 正直言うと、私の髪型(アフロ)は明らかに夏の夜には不利なのだ。フワフワ枕の上に乗った我がフワフワ頭が二重の羽毛布団のような役割を果たし、首や頭がムワーンと暑い。気温30度の無風の夜ともなれば不快感マックスとしか言いようがない。そのどうしようもない首回りが・・氷でひんやり! 考えただけでウットリだ。思わず「どこで売っているんですか」と聞くと、ペットボトルに水を入れて凍らせて首の下に置いておくんですと。なるほどそりゃ簡単でいいですねと感心していると、あ、稲垣さん冷蔵庫持ってないんですよね? 店の冷凍庫にペットボトル入れときましょうか? 帰るとき持ち帰っていただければ夜までちゃんと持ちますよとおっしゃるではないか!!

 念のため申し上げておくと、これは全く予期せぬ展開であった。誘導尋問でもなんでもない。だが、無欲な者には必要な時に必要なものが与えられるのである。で、無欲な者は与えられたものは遠慮なく受け取るのであった。いいんですか? やったー!! ということで、その日さっそくガチガチに凍ったペットボトルをタオルに包んで帰宅し、ワクワクしながらベッドにごろんと横になり、枕の下の部分あたりに冷たい包みを置いてみたら・・わあ~~超涼しいんですけど!! っていうか、首の後ろがひんやりするだけで、30度だろうが無風だろうが一気に不快感ゼロ! なんて超簡単なパラダイスなんだ・・と感激している間もなく、瞬殺で寝落ちである。いやーマジですごい! これさえあればどんな暑い夜だろうが全然大丈夫じゃん、もうエアコンなしでも全然平気だー・・と力説しまくる私。

 だがふと見ると、コーフンして喋っているのは私だけで、誰もそんなことは聞いちゃあいないのだった。

 みなさんがおっしゃる「夜も暑い」というのは、「どうしても寝苦しい夜が年に5日ある」とかそういう話じゃなかったんである。

 もう夏の夜はずーっとずーっと暑いし寝苦しい。いや寝る時だけじゃない、下手すりゃ6月頃から、エアコンなしじゃ不快すぎて昼も夜も一日中窓も開けられない、もうホント近頃の日本の夏はどうしようもない、ウンザリだというのが少なからぬ方々の実感であり怒りであり閉塞感だったんである。

エアコンのない状態がスタンダード

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筆者

稲垣えみ子

稲垣えみ子(いながき・えみこ) 元朝日新聞記者

1965年愛知県生まれ。87年朝日新聞社に入社し、大阪社会部、週刊朝日編集部などを経て編集委員。原発事故後に始めた「超節電生活」を綴ったコラムが話題となる。2016年、50歳になったのを機に早期退職し、現在都内で「町が我が家」をコンセプトに電気代200円以下、ガス契約なしの生活を送る。著書に「魂の代謝」「寂しい生活」(いずれも東洋経済新報社)「もうレシピ本はいらない」(マガジンハウス)など。