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フジテレビ「月9」という神話[3]

亀山千広氏が踏襲し成功させたトレンディードラマの終焉と現在地

川本裕司 朝日新聞記者

1993年のフジテレビの月9ドラマ「あすなろ白書」に出演した石田ひかり(左)と筒井道隆 (C)フジテレビ拡大1993年のフジテレビの月9ドラマ「あすなろ白書」に出演した石田ひかり(左)と筒井道隆 (C)フジテレビ
 ディレクターを一度も経験することなしに、91年1月、木曜10時のドラマ「結婚の理想と現実」(出演・中村雅俊、田中美佐子)でプロデューサーになった。「恋愛至上主義の大河ドラマ」と敬遠していた月9で、「あすなろ白書」を担当することになったのは、編成部長になっていた山田良明(71)=現・共同テレビ相談役=から「原作を読んでみろ」と薦められたからだった。

 柴門ふみ(61)の漫画原作ドラマは「同・級・生」、「東京ラブストーリー」と月9でいずれも人気を集め、三部作として期待された。亀山はテレビをあまり見ない大学生を主人公とする設定だったため、大学生予備軍の中高生とかつて学生だったOL向けの作品にしようと考えた。

 脚本は編成部の後輩、石原隆(57)=フジテレビ取締役=から「北川悦吏子さんはどうですか」と紹介された。起用した北川(56)から送られてきた30枚のほとんどは原作以降の話で、オリジナルのようだった。「迷ったら原作に戻って進めればいい」と決断した。

 NHKの朝ドラ「ひらり」(92年10月放送)で好演した石田ひかりのほか、筒井道隆、SMAPの木村拓哉らを配役した。撮影に入る前、亀山は筒井、木村と食事をしたとき、2人から「役を交換してもらえませんか」と提案された。気のいい青年役が多かった筒井がミステリアスな人物を、クールに見られがちな木村が人なつっこい役柄への変更を、2人で話し合ったうえ望んだのだった。異例の申し入れだったが、亀山は2人の気持ちがわかる気がして、「あしたまで、事務所には言わないで」と言って、要望に沿ったキャストを実現させた。

 大学を借りると時間の制約があるので、オープンセットを造って映画方式をとった。階段教室を下りていくとドラマが始まるといった形式で、移動カメラとともに視聴者の関心を引きつけるようにした。青春ラブストーリーだったが、配役についても石田ひかり以外はさほど知名度は高くない、新鮮な顔ぶれで挑んだ。平均視聴率は27%、最終回は30%を超えた。亀山は「楽しんで作って結構、数字も取れたドラマでした」。

北川悦吏子脚本で「好き」を封じた「ロンバケ」


筆者

川本裕司

川本裕司(かわもと・ひろし) 朝日新聞記者

朝日新聞記者。1959年生まれ。81年入社。学芸部、社会部などを経て、2006年から放送、通信、新聞などメディアを担当する編集委員などを歴任。著書に『変容するNHK』『テレビが映し出した平成という時代』『ニューメディア「誤算」の構造』。

 

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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