メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

大坂なおみの偉業でもテニスブームが来ない理由

全米オープンテニス優勝でも少子化の壁、復活錦織に残されたチャンスとは

倉沢鉄也 日鉄総研研究主幹

さて、これらの希少な話題を、あえて前置きと呼ぶ。筆者の最大の問題意識は「今回の素晴らしいできごとをもってしても、日本人のテニスにほとんど何も影響を与えないのではないか」という悲観的な展望にある。

 問題の一つは、錦織そして大坂に続く、グローバル・プレーヤーが日本のテニス界に出現するのかという点である。

 錦織は日本テニス協会の当時トップに才能を認められて単身留学した14歳以降、大坂は親の移住で3歳以降、一貫して米国在住者である。その米国の練習環境と下部ツアー試合の環境で、世界トップに直結するシビアな競争と、その選手たちのショットを1年中体験することができる。それは、日本のトップジュニア選手たちが学校の休み期間を使って年2、3回海外遠征してくる“甘い体験”とは、肌感覚が違い、得られる果実が違う。もちろん米国在住の選手でも膨大な脱落者が出現し続けている。

 錦織は小学生段階で日本のテニス関係者を驚かせていた天才的センス、大坂は体格(180センチ)と運動能力面の優位、をもってそのシビアな競争を勝ち残ってきたに過ぎない。

 とくに女子テニスの世界トップ層では身体の頑強さと筋力の強さが近年急激に求められてきている中で、今回の大坂の映像を見て「私にもできる」「わが子にもできる」と考える人が増えることを、想定しにくいのが現実だ。それは民族・人種的な問題では決してなく、そうした身体能力の持ち主の少年少女がテニス以外のスポーツを始めてしまうことが、テニス界に限って物を見たときの問題の本質である。

 実は現在日本の女子テニスは、ダブルスにおいて100位以内に5人(2018年9月10日現在ランキング。この中に大坂はいない)を送り込む充実した戦力を誇るが、テニスは男女ともにシングルスを勝ってナンボの世界であり、ダブルスは“おまけ”、全米オープンの1人あたりの優勝賞金額で言えばダブルスはシングルスの1割にも満たない。

致命的な少子化、テニスの人口も市場も伸び悩み

 

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

倉沢鉄也

倉沢鉄也(くらさわ・てつや) 日鉄総研研究主幹

1969年生まれ。東大法学部卒。(株)電通総研、(株)日本総合研究所を経て2014年4月より現職。専門はメディアビジネス、自動車交通のIT化。ライフスタイルの変化などが政策やビジネスに与える影響について幅広く調査研究、提言を行う。著書に『ITSビジネスの処方箋』『ITSビジネスの未来地図』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

倉沢鉄也の記事

もっと見る