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単純労働ではない介護は最後の砦(上)

日本は働く場として外国からいつまで選ばれる国でいられるのか

町亞聖 フリーアナウンサー

アジアの若者にとって“憧れの国”ではない日本

 介護福祉士や看護師の資格を持っているが働く場所が国内にはなく、高齢化が進むアジア各国で“労働者”として介護人材の受け入れが始まっているから応募するしかない。家族を養うためにも”出稼ぎ”もやむを得ない。

 しかし、共通の言語は“英語”で専門用語も覚えなければならないし、国家試験に合格しなければ在留資格をもらえない。さらに不安は尽きず、母国ではある程度のポジションに就いていたが、言葉の壁がある中で資格を活かすことは出来るのだろうか。また生活習慣や文化の違いにも慣れることは出来るだろうか……。

 現在、日本で介護の仕事を担ってくれている外国人介護人材の立場を、全て日本人に置き換えてみた。超々高齢社会の先に人口減少時代が到来することが確実な日本において、そんな状況に陥るわけがないと誰が断言できるだろうか。

 先日、仕事でフィリピンに行く機会があったがその時に感じたのは、アジアの他の国の若者にとって、日本はいつまでも”憧れの国”ではないということだった。外国人を単なる“労働者”と考えいつまでも“受け入れる”という上から目線でいると、このままでは日本は「選ばれない国」になると以前から危惧していたがその予感はすでに現実のものとなりつつある。

日本よりも先進的な“女性が活躍する国”フィリピン

 少しだけフィリピンの話を。早朝から鳴り響くクラクション、乗り合いのバス(ジプニー)はすし詰め状態、街並みはお世辞にも清潔とは言えず、ハリケーンが来たら吹き飛ばされてしまいそうな心許ない家があちらこちらに……。

 仕事で訪れたのはフィリピンのセブ島。平均年齢はなんと23歳!? 日本とは正反対のとても若い国フィリピンの人口は増え続けていてやがて2億人を超えると予想されている。依然として経済格差は存在しているが、港や空港などの開発はこれから本格化し2030年頃までにはフィリピンのセブは国際都市に生まれ変わるという。

 そんなフィリピンで驚いたのは管理職を占める女性の数が半数という「女性が活躍する国」だということ。ワークシェアリングの考え方が浸透し、お金持ちではなくとも正社員であればベビーシッターを雇うのは当たり前のことで、子供を産んだ後も迷わずに働き続けることができる環境が整っていると話してくれた。

 全ての女性に就労の機会が平等に与えられているわけではなく、看護師の資格を持っていても働く場所がないために飲食店に勤めざるを得ない現実があるのも事実だが、社会や国を変えていくために一番大切なその国に住む人々の意識は、待機児童の問題を放置し続けている“先進国”日本よりも確実に上だと感じた。

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