単純労働ではない介護は最後の砦(下)
受け入れる都合だけを優先させる日本の方式が通用する考えは楽観的すぎる
町亞聖 フリーアナウンサー
一人ひとりの向こうにある相手国をイメージできるか
技能実習生の受け入れも介護人材の不足への対応が目的ではなく、あくまでも開発途上地域への技能の移転を進め、経済発展を担う「人づくり」に協力するためと国は言う。しかし、母国に帰った実習生で同じ仕事に就いた人はほんのわずかという現状の中で、この言葉を信じる人はどれだけいるだろうか。
奴隷制度とも揶揄される技能実習制度に関しての批判はここでは控えたいと思うが、技能実習制度はスタートして25年、経済連携協定(EPA)も10年以上が経つ。真の目的の技能移転が出来ていないなど、それぞれの課題を解決せずに、介護人材のグローバル化という視点ではなく、受け入れる側だけの都合で受け入れを拡大し続ける日本。
去年、出入国管理及び難民認定法が一部改正され、技能実習とは別に日本の専門学校に通いながら介護福祉士の国家試験に合格した留学生には新たに在留資格が認められることになり、技能移転という目的とはますます矛盾していくと指摘されている。
すでに日本が憧れの国ではなくなっているのは、介護福祉士の国家試験に合格しても母国に帰る人が後を絶たないことにも表れている。フィリピンなど海外から日本に働きにきている人の多くは母国に家族を残してきている。
外国人人材を“安価な労働力”と考えるという同じ過ちを介護の現場では繰り返してはならない。そして、外国人人材は労働者ではなく“生活者”であり、一人ひとりに暮らしがあり、帰るべき故郷があるということも。
グローバル化に取り残される日本の介護現場