お金をかけずに売り上げをアップさせる試み、静岡・富士で全国サミットを開催
2018年10月01日
「Biz(ビズ)」と呼ばれる中小企業の支援拠点が全国に次々と開設されている。「ビズ」はビジネスの略語で、中小企業の経営者や創業をめざす人の相談に無料で応じる取り組みだ。「お金をかけないで売り上げアップを実現する」という原則を掲げる各地のビズがあげた実績の数々に注目が集まっている。
ビズのルーツは静岡県富士市が2000年8月に開いた市産業支援センター「f-Biz(エフビズ)」だ。静岡銀行出身で、41歳で創業支援機関に出向後は起業家支援に奔走していた小出宗昭さん(59)に富士市が声をかけて開業した。開設から10周年を迎え、中小企業などの累計相談件数は3万件を超え、相談した企業・経営者の約7割で売り上げ改善につながったという。
このエフビズをモデルに、全国に広まった各地のビズが一堂に会する「第1回全国Bizサミット」が8月下旬、富士市で開かれた。サミットには、台風の影響で欠席した長崎県新上五島町を除き、北は北海道釧路市から南は宮崎県日向市まで17ビズのセンター長と、市長や町長を含む自治体幹部らが参加。地域の産業振興に向けた基本理念を定めた「サミット宣言」を採択した。
サミット宣言は「相互の支援力及び連携力の向上を図り、地方産業の活性化、地方創生につなげるという共通の目的を確認した」とし、すべての業種・業態の幅広い創業・経営課題に応える▽相談者ごとに強みを見つけ、具体的な解決策を提案する▽結果が出るよう継続的に支援する、との3項目を基本理念に掲げた。
各地のセンター長が登壇し、「これが中小企業売り上げUPの極意」と題して中小企業支援の好事例を紹介するパネルディスカッションもあった。発表したセンター長らにとりわけ強い印象を残したのが「ひむか-Biz」(宮崎県日向市)の長友慎治センター長(41)が紹介した事例だ。
長友さんによると、日向市で1960年(昭和35)年創業の酒販店「米良商店」を営む米良重人さん(58)が昨年5月2日に相談に訪れた。米良さんは日本酒の利き酒師の資格を持ち、全国の酒蔵から自分が自信を持って勧める商品のみを仕入れて販売してきている。店舗を訪れた長友さんは、店内に並ぶ珍しい日本酒のラインアップや、店内が比較的に広いことから「角打ち」営業をすることを提案。米良さんは約1カ月後の6月2日から毎週金曜日に角打ち営業を始めた。
スタート時に長友さんは「やると決めたら毎週金曜日は必ず開けてください」という一つの約束の厳守を求めた。その約束を守った米良さんは、クリスマスや正月なども角打ちを続けた。そんな米良さんを応援するように、角打ち営業を1日も欠席しないお客さんまでできた。
その結果、1年が過ぎた時には、1回当たり平均20人、多い時は30人くらいが訪れるようになっていた。
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください