[21]健康で文化的な最低限度の生活とは?
生活保護基準引き下げと1万人不服審査請求運動
稲葉剛 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授
では、生活保護の基準はどの程度、引き下げられるのだろうか。
今回、見直しが実施されるのは、生活保護のうち生活費部分にあたる生活扶助の基準である。今年10月以降、2020年まで3年間にわたって段階的に基準が改定され、平均で1.8%(国費ベースで年160億円)の減額となる。ほぼ全ての世帯が引き下げとなった前回(2013年)の見直しと異なり、今回は約3分の1の世帯では基準が引き上げられるが、都市部の夫婦と子2人の世帯、高齢単身世帯等では約5%引き下げられることになる。
「たかが5%」という印象を持つ方もいるかもしれないが、月に数十万円、生活費に使える人と月に数万円しか使えない人とでは「5%」の意味は全く違ってくる。また、生活扶助基準は前回(2013年)の見直しにおいて平均6.5%、最大10%という過去最大の引き下げが実施されており、利用者にとって今回の引き下げは「家計を切り詰めた上に、さらに切り詰めなければならない」ことを意味する。
以下は東京23区など大都市部の生活扶助基準の推移を示した表である。

生活扶助基準の推移(日本弁護士連合会の資料より)
前回の引き下げは2013年から3年間にかけて段階的に実施されたが、2014年の消費税率引き上げ(5%から8%へ)では過去の例にならって生活扶助基準も一律2.9%増額されている(引き下げた上で、消費税分を引き上げた)。2012年と2015年の数字を比較して、引き下げ幅が小幅に見えるのはそのためだが、物価上昇分を踏まえると、実際の家計に与えている影響は大きい。
2012年までの基準はほぼ横ばいであったが、70歳以上の高齢者にはかつて月1万数千円の老齢加算が上乗せ支給されていた。老齢加算は、高齢者の特別なニーズに対応するもので、
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