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災害時の「計画運休」定着へ三つの課題

求められる前日発表、運転再開時の点検、多言語対応 平日なら影響は2倍

前田史郎 朝日新聞論説委員

 観測史上最高の大雨や、非常に強い勢力のまま上陸する台風など、極端な気象が相次ぐ最近、鉄道各社が荒天の前に列車の運行停止を決める「計画運休」に踏み切っている。不要不急の外出を控えることは防災の第一歩。それを促す意味で、効果的な策といえる。ただし百万人単位の「足」を止める以上、十分な周知が大前提。やり方を誤れば大混乱につながる。定着には鉄道各社のさらなる努力が必要だ。同時に、「空振り」であっても許容する社会のありようも求められている。

なぜ当日の発表か

台風24号の影響で首都圏のJRの在来線各線が午後8時から運休となった=2018年9月30日、JR東京駅拡大台風24号の影響で首都圏のJRの在来線各線が午後8時から運休となった=2018年9月30日、JR東京駅
 「結果的に混乱防止のために良かった」

 JR東日本の深沢祐二社長は10月3日、記者会見でそう断言した。

 台風24号が列島を縦断した9月30日、同社は初めて首都圏の全路線で計画的な運休を実施した。在来線だけで1218本、約45万人に影響が及んだ。それでも肯定的に振り返っただけでなく、「同じ規模の台風が来れば、平日でも同じ判断をする」とまで言い切った。

 今回は利用者が少ない週末だったことや、ロックバンドの「X JAPAN」が千葉・幕張メッセでの公演を中止するなど、多くのイベントも取りやめとなった。そうした周囲の環境にも救われ、大きな混乱は起きなかったといえる。

 ただし平日なら影響人員は2倍になる。本当に実施できるのか。

 今のやり方では、混乱は必至といわざるをえない。駅前に人が滞留し、タクシー乗り場には長蛇の列、帰る手段を失った人が暴風雨のなか、徒歩による帰宅をしいられる――。

 そんな恐ろしい光景が目に浮かぶ。

 理由は、JR東日本の判断が遅いことにある。今回の台風24号で、同社は30日の正午すぎに「午後8時以降の列車を全面ストップする」ことを発表した。8時間前では、午前中に出かけてしまった人は、帰りの足を失う。実際、相当数の人が駅まで来て運行打ち切りを知り、タクシーなどで帰ったとみられる。

 ちなみにJR西日本など近畿の鉄道も計画運休を実施したが、同社は前日のうちに京阪神の全線の運休を決めていた。なぜ東日本は「遅れた」のか。

 30日午前、都内では風雨もさほど強くなく、首都圏では晴れ間もみられた。だが、 ・・・ログインして読む
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筆者

前田史郎

前田史郎(まえだ・しろう) 朝日新聞論説委員

1961年生まれ。神戸、広島支局、東京・大阪社会部、特別報道部等で事件や原発・核問題、調査報道、災害などを担当。社会部デスク、教育エディター、大阪・社会部長、同編集局長補佐、論説委員、編集委員、論説副主幹を経て18年4月から現職。気象予報士。共著に『プロメテウスの罠』『核兵器廃絶への道』等。

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