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「新潮45」休刊は、議論の「場」の大きな損失

武田徹 評論家

「生産性」で測る価値観を疑え

 こうした手法を認めるかどうかは議論が必要だろうし、好き嫌いも厳しく分かれるのだろうが、新聞や放送にはできないスタイルであることは間違いない。たとえば新潮社がミシェル・フーコーの翻訳を出版して、差別・排除の問題を論じた議論の地平を用意した出版社であることや、文藝春秋社もそうだが、報道、論評を巧みに料理してメディア上で商品化する技術に長けた辣腕編集者が多く働いていることも意識してよいだろう。出版社系ジャーナリズムの記事は、そこに反語や諧謔、自虐や自らを含めた世間への違和感の表明など、一筋縄でくくれない様々な含意が秘められている可能性を常に視野に入れて読む。それは出版史を多少知る者にとっては当然の態度だろう。

 今回の杉田論文もそうした出版社系ジャーナリズムの産物ではないかと思った。まず安倍チルドレンの女性国会議員の露骨な差別主義者ぶりを露呈させる。そして「生産性」をもって人の優劣を判じているのは杉田議員だけでなく、実は社会そのものであることに気づかせる。そうだったとすれば新潮社はただ差別を助長しようとしているわけではなかったことになる。

 だとすれば「生産性」で人を測ることへの本質的な異議申し立てが杉田論文を受けて起きれば良いと思った。

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筆者

武田徹

武田徹(たけだ・とおる) 評論家

評論家。1958年生まれ。国際基督教大大学院比較文化専攻博士課程修了。ジャーナリストとして活動し、東大先端科学技術研究センター特任教授、恵泉女学園大人文学部教授を経て、17年4月から専修大文学部ジャーナリズム学科教授。専門はメディア社会論、共同体論、産業社会論。著書に『偽満州国論』、『流行人類学クロニクル』(サントリー学芸賞)、『「核」論――鉄腕アトムと原発事故のあいだ』『戦争報道』、『NHK問題』など。

 

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