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日本流アレンジの巧さで『スーツ』が想定外ヒット

ハリウッドの人気ドラマのリメイク、アメリカ版にはない人情味を織田裕二が絶妙に表現

杉浦由美子 ノンフィクションライター

フジテレビのドラマ『SUITS/スーツ』で主演している織田裕二=2018年9月14日拡大フジテレビのドラマ『SUITS/スーツ』で主演している織田裕二=2018年9月14日
 秋のドラマが始まった。視聴率的に注目したいのは、フジテレビ系の月9『SUITS/スーツ』(以下、スーツ)の好調ぶりだ。初回14.2%で日曜劇場『下町ロケット』の13.9%の上を記録し、2話もセクハラ訴訟という地味かつ新鮮味もないテーマだったのにも関わらず11.1%と高い数字だ。不振の月9枠、しかも、織田裕二と鈴木保奈美が『東京ラブストーリー』以来の27年ぶりの共演と”大コケな予感”がささやかれる企画だった。

 フジテレビはバブルの感覚が抜けてないと揶揄されてきたキー局で、今回も時代錯誤なドラマを作るのではないかと心配されていた。しかし、蓋を開けると、アメリカの人気ドラマを非常に巧みに日本人向けにアレンジし、よく出来たドラマになっている。今回は『スーツ』のアメリカ版と日本版の違いをみることで、日米視聴者のニーズの違いについて考えてみよう。

アメリカ版にはない「人情味」

 今回の日本版『スーツ』のストーリーはほぼアメリカ版と同じだ。

 ”敏腕弁護士が、天才的な頭脳を持つが不遇の青年を弁護士に仕立てて、部下として雇う”という話だ。

 主人公の敏腕弁護士(日本版では織田裕二)は大手法律事務所の敏腕弁護士だ。自信家で皮肉屋の彼は、違法ギリギリの手法を使っても、仕事を推し進めようとする。その彼が部下の弁護士を雇うことになる。ホテルの一室で面接をしていると、そこに麻薬の取引に巻き込まれて逃げてきた青年がやってくる(日本版では中島裕翔)。

 麻薬捜査官から逃げているという彼を面白がって、秘書と主人公は面接室に招き入れる。青年が「法律に関してはあなたより自分の方が詳しい」というので、主人公は彼を試す。すると、青年は六法全書の条文まで完璧に覚えていた。天才的な頭脳を持ちながらも、経済的な理由から、学生時代に不正行為に手を出し、そのため、ドロップアウトし犯罪に加担させられそうになっている。

 この青年を、主人公は部下として雇うわけだ。しかし、その動機の部分でアメリカ版と日本版で差が出る。

 織田裕二が演じる主人公は、青年の身の上話を聞くと、下を向き、口を強く閉じ、考え込む。そして、彼に支援を申し出る。

 主人公は、天才的な頭脳を持つ青年が不遇であることに同情するのだ。そして、その気持ちから麻薬の運び屋をやっている青年を弁護士に仕立てて、自分の仕事を手伝わせようという突拍子もないことを決心するのだ。

 この「同情の念」は、アメリカ版にはない要素だ。アメリカ版の主人公弁護士は徹底してクールで、自分の損得しか考えない。青年を拾うのも、「こいつは自分の役に立つ」「面白そうだ」という自分の欲望のためだけだ。アメリカの能力主義なので、能力があれば人間的に問題があっても良しとされるのだ。 ・・・ログインして読む
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筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

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