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「流れる密室」タクシーにも情報化の洪水は及び

武田徹 評論家

西鶴と『デカメロン』

 こうして1事業者、たった6台でスタートした東京のタクシーが1963年には事業者数で406、車両数1万8030台となっていた(東京乗用旅客自動車協会編『東旅協30年史――ハイヤー・タクシー発達の軌跡』、1990)。料金もこなれ、自家用車がまだまだ高嶺の花だった時代に、多くの人がタクシーで自動車という個室空間を経験する。だからこそ開高も「流れる密室」を書くためにタクシー運転手を取材している。

 あちらこちらのタクシーの運転手の溜まり場になっている食堂にでかけて、つぎからつぎへと来ては去る運転手さんをつかまえて話を聞いた。彼らの観察と記憶は奇抜な偶然性にみたされていて、意表をつくものばかりだった。西鶴と『デカメロン』をごちゃまぜにして読むような気がした。

 そんな『ずばり東京』の記述に触れて、改めて2020年五輪直前の東京のタクシー事情を確かめたくなった。 ・・・ログインして読む
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筆者

武田徹

武田徹(たけだ・とおる) 評論家

評論家。1958年生まれ。国際基督教大大学院比較文化専攻博士課程修了。ジャーナリストとして活動し、東大先端科学技術研究センター特任教授、恵泉女学園大人文学部教授を経て、17年4月から専修大文学部ジャーナリズム学科教授。専門はメディア社会論、共同体論、産業社会論。著書に『偽満州国論』、『流行人類学クロニクル』(サントリー学芸賞)、『「核」論――鉄腕アトムと原発事故のあいだ』『戦争報道』、『NHK問題』など。

 

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