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緊急地震速報を活用した社会活動の維持

 南海トラフ沿いの地震では、地震発生から揺れの到達までにある程度の時間的猶予があり、2007年から本格運用されている緊急地震速報の活用が期待できる。社会活動を続けるために不可欠な鉄道やエレベーター、高所作業や危険物を扱う建設現場や工場などは、緊急地震速報の利用を前提とした緊急停止や退避行動が事業継続の前提となる。高度利用者向けの緊急地震速報の活用が望まれる。

 沿岸の埋め立て地には、発電所、製油所、ガス工場、製鉄所、化学工場、コンテナターミナル、物流倉庫など、社会を支える重要施設や危険物が存在する。埋め立て地は、強い揺れ、液状化、津波、高潮などに見舞われる可能性が高い。また、多くの場合、背後地が海抜0m以下の干拓地だったり、連絡橋のみで結ばれており、孤立の恐れもある。隘路の強化や迂回路の確保、孤立時の籠城の準備などが必須である。また、海抜0m地帯は堤防が破堤すれば長期湛水し、各戸が孤立する。臨時情報を、埋め立て地の被害軽減にどう役立てるかの事前検討が必要である。

港湾の対策

 島国である日本では、港湾と空港が命綱である。万が一、臨時情報発表時に、大型船舶が入港を躊躇すれば、数週間で石油やLNGが枯渇し、電気や都市ガスの供給が難しくなる。港湾の安全確保と船舶への安全情報の発信が不可欠である。

 港湾内船舶の津波回避には速やかな沖出しが必要だが、満載した船舶は、通常、舳先を港側に向けて入船で停泊し、タグボートで半回転させるには時間がかかる。臨時情報発表時には出船での停泊を基本にしたい。

 港湾の関係者は多岐にわたり、岸壁の管理主体も多い。地震後の耐震岸壁の優先利用、航路警戒や岸壁復旧の優先順位、コンテナなどの流失防止など、調整が必要である。港湾の維持には、税関や検疫、出入国管理、旅客の乗降や貨物の荷役・保管などのターミナル機能、船舶への水・燃料・食糧・船用品などの補給機能などが欠かせない。このため、船舶代理店、通関業者、港湾運送事業者、水先人、曳船業者、ターミナルオペレーター、シップチャンドラーなどとの連携も必要となる。

 主要道路が閉塞したり、港湾が津波で被災した場合、空港が最後の砦となる。しかし、関西空港や中部国際空港のような海上空港は、液状化や津波浸水の危険度が高い。万一、主要国際空港の滑走路が使えなくなると、大型の長距離旅客機の着陸場所が不足する。また、港湾機能や連絡橋が利用できなくなると、ジェット燃料の供給が難しくなり、電気・ガス・水・食料などの供給、職員や旅客の移動も困難となる。地震後の早期空港再開のために、臨時情報発表時に実施すべき緊急対応をあらかじめ定めておきたい。

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筆者

福和伸夫

福和伸夫(ふくわ・のぶお) 名古屋大学減災連携研究センター長・教授

1957年に名古屋に生まれ、81年に名古屋大学大学院を修了した後、10年間、民間建設会社にて耐震研究に従事、その後、名古屋大学に異動し、工学部助教授、同先端技術共同研究センター教授、環境学研究科教授を経て、2012年より現職。建築耐震工学や地震工学に関する教育・研究の傍ら、減災活動を実践している。とくに、南海トラフ地震などの巨大災害の軽減のため、地域の産・官・学・民がホンキになり、その総力を結集することで災害を克服するよう、減災連携研究センターの設立、減災館の建設、あいち・なごや強靭化共創センターの創設などに力を注いでいる。

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