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「ジャパンブルー」のタクシーが街の風景を変える

武田徹 評論家

藍色のタクシーを街のアイコンに

――開発中、特に意識したことは?

粥川 自家用車と違ってタクシーの場合はリアシートに座るわけで、リアシート中心にデザインや装備を再検討しています。室内の高さを確保して背の高い人でも閉塞感なしに乗れるようにするのはロンドンタクシーと同じ発想ですが、シートや客室空間については乗り心地や静粛性を求めてきた日本のタクシーの歴史を活かそうとしました。安全性を確保するために後席にもカーテンシールド式エアバッグを着けましたし、シートベルトの着用を促す表示や、暗いなかでも装着しやすくするためにシートベルトの取付部にLED照明をつける工夫などもしています。これらが結果的に日本ならではの<おもてなし>の精神を表現することになったのではないかと思います。

――ご自身が交通事故に遭って車椅子で生活するようになった川崎和夫さんという工業デザイナーに話を聞いたことがあって、彼はユニバーサルデザインを最も実践している自動車メーカーはフェラーリだと言っていました。その理由は工場まで赴けば特注で運転手に合わせたシートを作ってくれるからだそうです。きめ細かなパーソナライズを可能にして、障がい者をも含めて誰にでも使いやすいクルマを生産できるシステムを持つことこそユニバーサルデザインだというわけです。説得力を感じましたが、それは自家用車の論理です。タクシーのユニバーサルデザインはそれとは違う。

粥川 タクシーは誰が乗るかわからない。となると、

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筆者

武田徹

武田徹(たけだ・とおる) 評論家

評論家。1958年生まれ。国際基督教大大学院比較文化専攻博士課程修了。ジャーナリストとして活動し、東大先端科学技術研究センター特任教授、恵泉女学園大人文学部教授を経て、17年4月から専修大文学部ジャーナリズム学科教授。専門はメディア社会論、共同体論、産業社会論。著書に『偽満州国論』、『流行人類学クロニクル』(サントリー学芸賞)、『「核」論――鉄腕アトムと原発事故のあいだ』『戦争報道』、『NHK問題』など。

 

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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