杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター
1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。
中学生との禁断の恋を描くためには配慮が必要、配慮の失敗が視聴者離れの原因か
今年3月に東京都足立区立中学で行われた性教育の授業で避妊について教えたことに対して、都教育委員会が「不適切」と指導したことが話題になった。なぜ、不適切かというと、中学生に教えるのはまだ早すぎるということのようだ。
中学生への性教育が注目される中で、今クール、女性教師が教え子の男子中学生と恋に落ちる『中学聖日記』(TBS系)を放送している。原作はかわかみじゅんこによる女性向けコミックスだ。
出版社で働く漫画編集者はいう。
「この漫画がゴールデンタイムに放送されると聞いて、たぶん、うまくいかないと思いました。TBSは1999年に、松島奈々子演じる高校教師が、教え子の高校1年生(滝沢秀明)と恋をするというドラマをヒットさせました。その成功体験があるので、今回の企画が通ったのかもしれません。しかし、時代が違います。世情を考えたらより配慮が必要になります。普通以上に配慮が必要なテーマの作品はそうそううまく作り上げられないからです」
実際、ドラマの視聴率は、初回6.0%。以降も低空飛行で4話は5.4%という数字を記録した。なぜ、母親たちはこのドラマに反発するのか。それは中学生もセックスをする可能性があると認識されているからだ。
以前、都内の名門国立大学附属小学校のママコミュニティを取材したことがある。「都会の学校のせいか早熟で、男女交際が盛んなんです。ママ友ランチ会で息子にコンドームの使い方を教えるべきかという話題になるんです」
これが中学生にもなると、さらに母親たちの心配は強まる。
ある地方都市の男子中学生の母親はいう。彼女の息子は公立中学でバスケ部のエースで、しかもイケメンなので、女子に人気がある。
「先日も試合があったら、他校の女子たちがうちの息子に『かっこいい!』とキャアキャアいってたんです。息子も彼女たちには愛想がよくて。そうしたら、ママ友たちから『気をつけなさいよ』と心配されて」
ようは、女子から誘われたら、好奇心や性欲から性的な関係を持ってしまうかもしれない。それを母親たちが心配するのだ。
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