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[22]政治家の差別発言をどうすればなくせるか

多様なマイノリティー当事者が集まり、議論

稲葉剛 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任准教授

「障害の社会モデル」、変わるべきは社会環境だ

 一生懸命、リハビリをしたものの、健常者になることはできず、「自分は社会の中で生きていけるのだろうか」という不安を抱えていた頃、障害者の当事者運動に出会い、「障害の社会モデル」という考え方を知ることができた。それは自分にとって、とてもラッキーなことだったと熊谷さんは振り返る。

「障害とは皮膚の内側にあるのではない。皮膚の外側にあるものだ。階段をのぼれない私の体の中に障害があるのではない。階段しか設置していない建物の中に障害がある、というのが社会モデルの考え方です。この考え方は180度、私の見方を変えてくれました」

「変わるべきは、私の体ではない。私の心ではない。変わるべきは社会環境だということを先輩が教えてくれたのです。自分を責めすぎることなく、運動という形で社会の側を変えるということを信じていくことで生きていくことができるようになりました」

 社会モデルは障害の問題だけでなく、さまざまなマイノリティーの問題に応用できる考え方だと熊谷さんは指摘する。

 しかし、ここ数年、障害者運動の半世紀の取り組みを全否定するかのような動きが政治の場や日常にあふれてきていると熊谷さんは感じているという。「これは何としても止めないといけない」と熊谷さんは危機感を語った。

 なぜ差別を政治の場で議論しないといけないのか。

 その問いに答える一つの方法として、熊谷さんは「健康の社会的決定要因」(SDH)に関する海外の先進的な研究成果を紹介した。

 近年、医学が進歩しても、貧困状態にある人や依存症、精神疾患を抱える人など、一部の人たちにその恩恵が行きわたっていないという問題に多くの研究者が取り組んでいる。

健康格差を生じさせる社会的要因

 そこで注目されるようになったのが、健康格差を生じさせる社会的要因である。

 ある社会的要因が健康格差に影響に与えているかどうかは、以下の3つの条件で判断できると言う。

1.それは、様々なメカニズムで、多くの人々の心身の健康に影響を与える。
2.それは、良い健康状態を維持するのに不可欠な、物理的、対人関係的、心理的な資源へのアクセスを妨げる。
3.それは、時代が変わっても、新しいメカニズムへと進化することで、健康の不平等を再生産する。

 スティグマはこの3つの条件をすべて満たしている。スティグマは人を傷つけたり、自尊心を奪ったりするということを越えて、健康の不平等を生じせしめていると熊谷さんは指摘する。

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筆者

稲葉剛

稲葉剛(いなば・つよし) 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任准教授

一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事。住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人。生活保護問題対策全国会議幹事。 1969年広島県生まれ。1994年より路上生活者の支援活動に関わる。2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。幅広い生活困窮者への相談・支援活動を展開し、2014年まで理事長を務める。2014年、つくろい東京ファンドを設立し、空き家を活用した低所得者への住宅支援事業に取り組む。著書に『貧困の現場から社会を変える』(堀之内出版)、『鵺の鳴く夜を正しく恐れるために』(エディマン/新宿書房)、『生活保護から考える』(岩波新書)等。

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