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『大恋愛』をなぜ男性視聴者は理解できないのか

今クール唯一話題の恋愛ドラマが『逃げ恥』に及ばないのは男性層を巻き込めないからか

杉浦由美子 ノンフィクションライター

拡大『大恋愛』に出演している戸田恵梨香=2015年
 この秋は恋愛ドラマが目白押しだ。『中学聖日記』(TBS)、『獣になれない私たち』(日本テレビ)、『黄昏流星群』(フジテレビ)は、中学生、アラサー、中高年とそれぞれ違う世代の恋愛を描いたドラマだが、どれも平均視聴率は1桁台と不調だ。その中で唯一、好調な恋愛ドラマのが『大恋愛』だ。

 若年性アルツハイマーに冒された医師(戸田恵梨香)を、売れない作家の恋人(ムロツヨシ)が支えるという〝美女と野獣〟恋愛ドラマだ。初回視聴率が10.4%で、2話が10.6%、3話10.9%と右肩上がりで推移している。

 先月末の定例会見で、TBSの佐々木卓社長もこのドラマの好調さに触れた。視聴率だけではなく、見逃し配信の再生数も好調だ。第1話の再生数は167万回を記録し、TBSのドラマでは今までなかった数字だそうだ。

 見逃し再生数が多いというのはなにを指すか。口コミで話題になっていることだろう。ツイッターで検索しても、「この秋のドラマ、『大恋愛』だけはみてる」という旨を投稿する女性ユーザーが目立つ。

 私もノーチェックのドラマだったが、取材で会った女性小説家が「編集者さんから勧められ見始めた。脚本がよくできているからみた方がいいよ」と教えてくれたからだった。

『逃げ恥』に及ばないのは男性視聴者が理解しにくいから

 初回から視聴率を伸ばしているのは、『逃げるは恥だが役に立つ』と同じ動きで、TBS幹部も期待を高めるのは分かる。しかし、定例会見後に放映した第4話は9.6%と数字が下がってしまった。なぜ、『大恋愛』は視聴率面で『逃げ恥』にかなわないのか。完璧な脚本、新鮮なキャスティングで、『大恋愛』は傑作であるのは確かなのに。

 理由は男性視聴者の動向だ。逃げ恥は普段ドラマをみない若い男性層に受けたことが大ヒットに繋がった。一方、『大恋愛』は女性たちだけが強く支持し、一方で男性視聴者はあまりみていない。
『大恋愛』が男性視聴者を取り込めない最大の理由は、「なぜヒロインが男に恋をしたか」が分かりにくい点だろう。

 主人公(ムロツヨシ)のバイト先の男性同僚が、ヒロインにこう尋ねる。「こいつのどこがそんなに良かったんですか」と。この疑問は多くの男性視聴者も持つようだ。ネットコラムでも男性コラムニストが「なぜヒロインが男を好きになる理由が分からない」と述べている。

 たぶん、こういう筋ならば、男性視聴者も納得できたのだろう。ヒロインの美人医師は若年性アルツハイマーになり、エリート婚約者に捨てられる。傷心のところに、売れない作家と出会い、病気ごと自分を受け入れてくれる彼を愛するようになる……。 ・・・ログインして読む
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筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

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