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社会通念という言葉で責任を回避した裁判官[1]

伊方原発3号機運転を禁止した広島高裁の仮処分決定を取り消した理屈

瀬木比呂志 明治大法科大学院教授

 原発の運転をめぐる裁判所の判断が、目まぐるしく揺れている。たとえば、原発に影響を与える火山の噴火リスクをどう評価するかについて、裁判官によって結論が違ってきている。判断の理由についても、明確な論理性や科学性に貫かれているわけではない。裁判官の人事権を握る最高裁やその事務総局によるプレッシャーを指摘する声がある。裁判官は良心に基づいて、原発訴訟についての決定を下せているのだろうか。

          ■

 1 広島高裁が、2017年12月13日、広島地裁の仮処分却下決定に対する債権者ら(住民ら。通常の民事訴訟でいえば原告らに当たる)の即時抗告を容れ、伊方原発3号機の運転を2018年9月30日まで禁じる仮処分命令を発したこととこの判断の分析については、僕のWEBRONZA記事(「初の高裁による原発稼働差止め決定の分析――阿蘇カルデラの噴火の可能性を認めた意義は大、国際的基準より劣る日本の規制要求」)に書いたところだが、同高裁は、この仮処分に対する保全異議審(民事保全法の定める同じ審級における不服申立て)について、2018年9月25日に、先の決定を取り消した(以下、広島高裁の認容決定を「広島高裁認容決定」、広島高裁の取消決定を「広島高裁取消決定」という)。

 この判断についての最大の疑問は、火山の危険性についての公的基準である「火山ガイド(原子力発電所の火山影響評価ガイド)」の内容を不合理としながら、一方では、破局的噴火のリスクは発生確率が低いから社会通念上容認すべきものであるとしたことにある。これについては、東京新聞10月6日「こちら特報部」記事が批判しており、そこには僕のコメントも掲載されている。

 この問題は非常に重要なものだが内容が難しいため、正確な理解のために、まずは、僕の先の記事の一部引用から始めたい(引用部分は『 』でくくっているので、以前の記事を記憶している人は流し読みしていただいても結構である)。

 2 僕は、先の記事で、次のように述べている(文章の流れを考えて接続詞等は一部変えている)。

『広島高裁が、2017年12月13日、広島地裁の仮処分却下決定に対する債権者ら(住民ら)の即時抗告を容れ、伊方原発3号機の運転を2018年9月30日まで禁じる仮処分命令を発した。

 初の高裁による原発稼働差止め仮処分、判断であり、この点で、社会やほかの原発訴訟に与える影響が大きいと思われる。

 もっとも、判断の内容をみると、かなりの問題をも含んでおり、手放しで全体を評価できるようなものではない。その意味では、いわば、「諸刃の剣の決定」といってよいだろう。 ・・・ログインして読む
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筆者

瀬木比呂志

瀬木比呂志(せぎ・ひろし) 明治大法科大学院教授

1954年名古屋市生まれ。東京大学法学部在学中に司法試験に合格。裁判官として東京地裁、最高裁などに勤務、アメリカ留学。並行して研究、執筆や学会報告を行う。2012年から現職。専攻は民事訴訟法。著書に『絶望の裁判所』『リベラルアーツの学び方』『民事訴訟の本質と諸相』など多数。15年、著書『ニッポンの裁判』で第2回城山三郎賞を受賞。

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