メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

ゴーン氏の行為は犯罪的、検察は正義感を重視か

「多くの社員を切り捨てた社長が年収何十億円」は許されるか 自白偏重のフランス司法

河合幹雄 桐蔭横浜大学法学部教授(法社会学)

「高給は当然」という意見への驚き

 一般論としては、形式は法技術であり、実質判断こそがむずかしい。今回のケースは、実質判断は簡単で、何罪に問うかという法技術がむずかしい。何罪にどう問うかについては意見百出しているようだが、そのなかに、虚偽記載は形式犯に過ぎないというものがあることに驚かされた。

 実質的にゴーン氏の行いが犯罪的であることは明白と考えるが、グローバルスタンダードでは、これぐらいの高給は当然だとか、臆面もなく堂々と述べている人たちがいる。その人たちの勢いが強いことは事実として、私も承知している。しかし、タックスヘイブンの繁栄などを見るにつけ、その類の稼いでいる人たちは賊以外の何者でもないとしか見えない。

 このような状況を鑑みるに、私が想起するのは大げさでなくフランス革命である。当時、王様や貴族が大金持ちで贅沢するのは当たり前だと言っていた人々と、これらの現代資産家の人々は重ね合わすことができる。確かに、当時の制度では、王様も貴族も認められていた。現在、企業家が巨額報酬を得ることが合法であるのと全く同じようにである。経済的不平等に怒るパリ市民のデモが向かうのは、今回はバスティーユ牢獄ではないであろう。日本には革命は起きないとしても、血盟団事件の歴史も忘れてはならない。

 現在の大金持ちを生む仕組みは、グローバル化などということでカムフラージュされることもあるが、アメリカ流に他ならず、世界の資産家ランキングを見れば、ひとりで中進国の国家予算ぐらい保持する人たちがいる。しかも、その顔ぶれを見れば、そもそも公正な競争で稼いだ人たちではない、と私には思われる。

 現在の経済格差は、同一国内でも中世身分制時代より酷いのではないか。そこを是正する制度ができるどころか、金持ちは政治家に献金し、政治家を使って法律を自分たちのために有利になるように変えている。わかりやすいのはカジノで、賭博であり本来犯罪であることを、うまい理屈で合法として稼ぐ、つまり犯罪を合法化して稼ぐのが今のはやりである。このまま政治が、処方箋を見つけられずにいるなら、何らかの不測の事態が起きてしまうと予想する。もはや細かい法律解釈論をやっている場合なのか、疑問なぐらいである。

 もっとも、億を超える報酬を得た役員について報告するように求めた金融商品取引法の改正趣旨が、法外な高報酬の抑制だったのなら、今回のケースは簡単である。やめてからの10億円は確定していないなどは詭弁で、後からもらえる報酬をその年に可能性としても獲得したのなら記載義務は明らかであろう。

・・・ログインして読む
(残り:約3280文字/本文:約5310文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

河合幹雄

河合幹雄(かわい・みきお) 桐蔭横浜大学法学部教授(法社会学)

1960年、奈良県生まれ。京都大大学院法学研究科で法社会学専攻、博士後期課程認定修了。京都大学法学部助手をへて桐蔭横浜大学へ。法務省矯正局における「矯正処遇に関する政策研究会」委員、警察大学校嘱託教官(特別捜査幹部研修教官)。著書に『安全神話崩壊のパラドックス 治安の法社会学』『日本の殺人』『終身刑の死角』。

河合幹雄の記事

もっと見る