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拡大財務省などが入る中央合同庁舎第4号館の地下部分に設置されているダンパー=10月19日、東京都千代田区

 この数年、製造業のトップ企業の品質データ不正が続いている。建設関係では、2015年に東洋ゴムによる免震用ゴムの試験データの偽装と、旭化成建材の杭打ち工事データの改ざん、2016年に東亜建設工業の空港工事での地盤改良データの改ざん、本年にはKYBなどによるオイルダンパーの検査データの改ざんが明らかになった。このようなデータ不正は、建設業界に留まらない。

 自動車業界では、三菱自動車やスズキ、日産自動車、スバルの燃費データの改ざんや完成検査の不正があった。海外では、排出ガス規制の不正をしたドイツのフォルクス・ワーゲン社の事例がある。部品や素材を供給するメーカーでも、神戸製鋼所による航空機、自動車、鉄道などに使用するアルミ・銅、鉄粉などの性能データ改ざん、日立化成による非常用バックアップ電源などに使う鉛蓄電池のデータ改ざん、三菱マテリアルグループによる自動車や航空機、スマホ、土木建設に使う電線・ケーブル類、アルミ製品、金属加工品などの不正品出荷など、不祥事が相次いでいる。

 いずれも、建設、自動車、航空機という人命に関わるものの不正であり、社会の安全の根幹を揺るがすものである。何故、品質を売りにしていた日本のトップ企業がこのようなデータ不正を行ったのだろうか。最近発生したオイルダンパーの問題を通して考えてみる。

免震とは

 一般に、免震では、建物の下に免震装置を設置し、建物を長周期化して地震動との共振を避け、万一の共振に備えて減衰を付与する。長周期化のために使うのが積層ゴム、減衰付与のために使うのがダンパーである。積層ゴムは、薄いゴムの間に鉄板を挟んで接着することで、横からの力に対しては軟らかく、上下の力には硬い装置を実現している。これにより、重い建物を支えつつ、地震の横ゆれを建物に伝えないようにしている。ただし、地盤の揺れ方によっては共振して建物が大きく揺れるため、揺れが早く減衰するようにダンパーを併用する。ダンパーには様々な種類があり、鉛ダンパー、鋼材ダンパー、摩擦ダンパー、オイルダンパーなどがある。その他にも、高減衰積層ゴムや鉛プラグ入り積層ゴムなども使われる。通常はこれらを組み合わせて使う。オイルダンパーは水鉄砲のようなもので、水の代わりにオイルを使う。自動車のショックアブソーバーを大型にしたものである。

制振とは

 制振は、建物そのものの揺れを早く減衰させるために、建物に付加的に減衰の仕組みを入れたもので、多くの場合、減衰が小さい鉄骨の高層ビルに使われる。中低層のビルは地盤に比べて堅いので、建物の振動エネルギーが地盤に逃げやすいが、柔らかい鉄骨造の高層ビルは振動エネルギーが留まりやすく、共振すると揺れが大きく増幅する。このため、最近の高層ビルでは長周期地震動対策に制振を使うことが多い。制振には、機械の制御のように力を加えて制御するアクティブ制振と、建物内に付加的な減衰装置を入れたパッシブ制振があり、後者が一般的である。

 制振には風対策用と地震対策用があり、かつては風用が多く、ビルの上に建物と同じ周期で揺れる振り子を乗せたTMD(Tuned Mass Damper:質量同調ダンパー)がよく用いられる。地震用の制振ダンパーには、鋼材ダンパー、摩擦ダンパー、粘性体や粘弾性体を使ったダンパー、オイルダンパーなどがある。オイルダンパーは微小な揺れから大きな揺れまで効くが一般に高価である。免震用に比べ制振用のダンパーはストロークが小さい。免震用は何十cmも変形させるが、制振用は数cm程度の変形能のものを各層各所に設置する。このためダンパー数は格段に多い。

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筆者

福和伸夫

福和伸夫(ふくわ・のぶお) 名古屋大学減災連携研究センター長・教授

1957年に名古屋に生まれ、81年に名古屋大学大学院を修了した後、10年間、民間建設会社にて耐震研究に従事、その後、名古屋大学に異動し、工学部助教授、同先端技術共同研究センター教授、環境学研究科教授を経て、2012年より現職。建築耐震工学や地震工学に関する教育・研究の傍ら、減災活動を実践している。とくに、南海トラフ地震などの巨大災害の軽減のため、地域の産・官・学・民がホンキになり、その総力を結集することで災害を克服するよう、減災連携研究センターの設立、減災館の建設、あいち・なごや強靭化共創センターの創設などに力を注いでいる。

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