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他局が目を向けない競技を開拓したテレ東[17]

世界卓球、海外サッカー、ローラーゲーム、女子プロレス……先駆者の挫折と成果

川本裕司 朝日新聞社会部記者

 2018年10月25日午後6時55分からテレビ東京で、新しく発足した卓球の新リーグ「Tリーグ」の女子開幕戦が中継された。ゴールデンタイムで卓球が放送されるのは、国際大会を除けば異例だ。視聴率は3.7%にとどまったが、卓球の放送に力を入れてきた局の姿勢を示した編成だった。

 テレビ東京が卓球の世界選手権を初めて放送したのは2005年。他の民放が世界陸上(TBS)、世界水泳(テレビ朝日)、世界柔道(フジテレビ)などの放送権を獲得しているなか、テレビ東京が目をつけたのは手あかのついていない卓球だった。泣き虫愛ちゃんこと福原愛が卓球界のアイドルとしてお茶の間でも認知されてはいたが、地上波のゴールデンタイム(夜7~10時)での卓球中継は皆無だった時代だけに、思い切った決断だった。

拡大卓球世界選手権団体戦の女子準々決勝でフルゲームの末、韓国選手を破った福原愛=2012年3月30日、ドイツ・ドルトムント
 個人戦と団体戦を交互にして毎年開催される世界卓球は、個人戦だった05年上海大会では福原の試合を中心に編成し、大会4日目に最高視聴率9.2%を記録。続く団体戦の06年ブレーメン大会でもゴールデンタイムで12%を超える中継が出るなど高視聴率を獲得した。さらに08年広州大会(団体戦)では男子と女子がともに銅メダルに輝き、ゴールデンタイムとプライムタイム(夜7~11時)の平均視聴率が平均11.5%、最高視聴率で15.9%に達するなど、日本人選手の躍進とともに、視聴率も右肩上がりを記録した。

 地元開催となった09年横浜大会(個人戦)では、局の女子アナウンサーが「ピンポン7」と称したイメージキャラクターとなってPRに努めたが、期待の女子選手は結果を出せず、最高視聴率は8.8%にとどまった。日本選手が勝ち進むかどうかで、中継に対する視聴者の関心度は大きく左右される。

 番組編成で難しいのは、試合時間が決まっているサッカーなどと違い、卓球の試合時間は短いと1時間半、長ければ5時間といわれ放送時間の予測ができない点だ。放送時間の延長については数十通りを想定して臨むという。撮影でも、卓球台に対し平行移動するレールカメラやより立体的な映像をもたらすクレーンカメラを導入するなど、卓球を見せる手法にもバリエーションが加わった。

 また、日本卓球界には福原に続く選手が続々と登場してくる。石川佳純に加え伊藤美誠、平野美宇ら若手が成長し、福原だけに注目と期待が集まっていた状況から大きく変貌を遂げた。16年リオデジャネイロ五輪では女子団体の銅メダルを獲得、国民的な人気スポーツの仲間入りを果たした。18年4~5月の世界卓球ハルムスタッド大会(団体戦)では、女子が銀メダルになる活躍で、世界卓球の番組史上2位となる視聴率15.7%を記録した。女子だけでなく男子も、近年は張本智和らの躍進で視聴者の関心はかつてないほど高まっている。

 最近では、テレビ東京のホームページに設けられている「テレビ東京卓球ニュース」からの発信に力を入れている。専属の記者、カメラマンを大会に派遣し、独自の記事や映像を載せるとともに、世界卓球やワールドツアーなど数多くの試合のライブ配信を実施、同局で最もページビューの多い人気サイトとなっている。

 局をあげての「卓球シフト」は徹底している。世界卓球と並ぶ国際大会のワールドカップも17年から放送。TリーグもBSテレ東で年間18試合の放送を見込んでいる。さらに18年11月4日に伊藤がスウェーデン・オープンで中国の強豪を次々に倒し優勝した際には、BSテレ東で翌5日夜に特別番組を急きょ編成した。 ・・・ログインして読む
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筆者

川本裕司

川本裕司(かわもと・ひろし) 朝日新聞社会部記者

朝日新聞社会部員。1959年生まれ。81年入社。学芸部、社会部などを経て、2006年から放送、通信、新聞などメディアを担当する編集委員。10年、論説委員兼務。17年4月から東京社会部。著書に『ニューメディア「誤算」の構造』。共著に『テレビジャーナリズムの現在』『被告席のメディア』『新聞をひらく』。

 

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