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[23]貧困を悪化させるGW10連休

福祉と労働の現場への影響は看過できない

稲葉剛 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任准教授

 11月13日、政府は天皇の代替わりに伴い、新天皇が即位する2019年5月1日と「即位礼正殿の儀」が行われる同年10月22日を、その年一回限りの祝日として扱う特別法案を閣議決定した。

 この法案が国会で通れば、来年のゴールデンウィークは4月27日から5月6日まで10連休となる。

 菅義偉官房長官は記者会見で、法案の意義について「国民こぞって祝意を示すため、祝日扱いとする」と説明。10連休に関しては「ゆとりのある国民生活の実現を期待する」と述べた。

医療・介護・保育の現場で広がる懸念

 この超大型連休については、観光業界から期待の声があがるものの、医療・介護・保育などの現場ではマイナスの影響が出るのではないかという懸念が広がっている。

 10連休で「ゆとりある国民生活」を実現できるのは、もともとゆとりのある人だけではないだろうか。ここでは、貧困問題への影響という観点から10連休の弊害について考えてみたい。

最も懸念される生活保護行政への影響

拡大行列ができた年越し派遣村の入村手続き窓口。10連休になれば同じような取り組みが必要になるかもしれない=2008年12月31日、東京・日比谷公園
 私が最も懸念しているのは、生活保護行政への影響である。

 通常、生活に困っている人が生活保護を申請すると、福祉事務所は原則14日以内(特別な事情がある場合は30日以内)に書面で可否を通知しなければならない。生活保護が決定されると、保護費は申請日にさかのぼって支給される。

 決定までの期間、申請者が当面の生活費を持っていなければ、社会福祉協議会などから一時金の貸し付けを受けることができる。また、急いで医療機関にかからなければならない場合は、生活保護の指定医療機関で申請中であることを伝えれば、決定後に役所が医療費の処理をするという前提で、医療を受けることもできる。

 実は、生活保護の申請行為自体は、役所が閉庁期間中であっても可能である。支援団体のホームページ等から申請書をダウンロードした上で、必要事項を書き込み、郵便やファクスで申請書を送付したり、役所の夜間休日窓口に申請書を持っていくといった方法を取れば、福祉事務所の窓口が開いていなくても申請することができるのだ。2008年の年末から2009年の年始にかけて開設された「年越し派遣村」では、ファクスにより千代田区福祉事務所への集団申請が行われた前例もある。

 だが閉庁期間中は、申請行為自体はできても、一時貸付金の受け取りはできなくなる。医療機関への受診も、医療機関が福祉事務所への確認ができないことを理由に10割の医療費を本人に請求する可能性がある。

 また、住まいのない生活困窮者の場合、民間団体による支援がなければ、連休後まで宿泊の支援を受けることができない可能性が高い。

 連休により、役所が10日間閉庁するということは、その期間、生活困窮者にとっての「最後のセーフティネット」である生活保護が事実上、機能を停止するということを意味している。最悪の場合、路上に放置された人が命を落とす事態も想定されるのだ。

 また、生活保護の窓口だけでなく、ハローワークや生活困窮者自立支援事業の相談窓口、障害者福祉や高齢者福祉の窓口なども10日間閉まることになる。その弊害は大きいと言えよう。

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筆者

稲葉剛

稲葉剛(いなば・つよし) 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任准教授

一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事。住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人。生活保護問題対策全国会議幹事。 1969年広島県生まれ。1994年より路上生活者の支援活動に関わる。2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。幅広い生活困窮者への相談・支援活動を展開し、2014年まで理事長を務める。2014年、つくろい東京ファンドを設立し、空き家を活用した低所得者への住宅支援事業に取り組む。著書に『貧困の現場から社会を変える』(堀之内出版)、『鵺の鳴く夜を正しく恐れるために』(エディマン/新宿書房)、『生活保護から考える』(岩波新書)等。

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