テレビの内側にいた人に聞く 映像で「様」を見せてほしい
2018年12月14日
好景気のバブル期から「失われた20年」を経て、30年間の平成時代のテレビはどう移り変わったのか。かつてテレビ局や制作会社に所属し、番組の内側をよく知る人たちに、民放の現状についての評価を聞いた。
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河合薫さん 健康社会学者(気象予報士としてテレビ朝日「ニュースステーション」に出演)
--「ニュースステーション」出演のきっかけとは。
--なんとも急な。
「私をはじめ、合格した気象予報士5人が日替わりで出演しました。番組の企画として、合格者から5人をつかまえて1週間出すことになっていたらしいです。ディレクターの裁量で5人を現場で選ぶのですから大胆ですが、『ニュースステーション』はチャレンジングな試みをしていて、『おもしろそうな人を連れてこい』という指示があったようです。テレビに出たいという希望があったわけではないのですが、『わかりやすい』と言ってくださって、12月から毎週金曜、その後に木、金曜に出演することになりました」
--天気予報ではどんな工夫を。
「スタジオで雲の中身を見せることにしたときのことです。上昇気流の動きは、いってみればおみそ汁の具が上下運動するようなものです。白い小さな物体をドライヤーで吹き上げながら、上昇気流によって雨や雪ができる仕組みを表現しました。白い物体に何を使うか、ドライヤーの風の強弱をどう使い分けるかと、スタッフと一緒に知恵を絞りました。以前の天気コーナーは女性アナウンサーが担当していて、ニュースが押すと短縮されがちでした。私になってから、クッション扱いはやめると言われました。アイデアをひねり、10の材料を集めてはそぎ落とし1つにする作業を繰り返しました」
--スタッフから言われて記憶に残るものがあれば。
「『様(さま)を見せろ』という言葉です。雲の様子をわかりやすく見せるというのも、その一環でした。映像の力を生かすため、ひと目でわかるようにする新しい工夫を求められました。グラフや図を大型のカードで示すフリップはよく使われますが、安心材料でしかありません。様を効果的に伝えるものとはいえません。その意味で、日本テレビの科学番組『所さんの目がテン!』は音声の使い方を含め、様を見せる工夫に満ちていて勉強になりました。久米宏さんからは『うまくやろうと思わなくていいけれど、もう少しテレビ的にやりたいのなら落語を聞きなさい』といわれ、寄席に行くようになりました。間(ま)を覚えなさい、という意味でした」
--4年余り出演した「ニュースステーション」で学んだものとは。
「見ている人があした話題にすることをやれ、とよく言われました。新しいことをすることはいいこと、という空気でした。企画コーナーでは『風俗を語るときは政治的に語れ、政治を語るときは風俗を語るように語れ』ともよく言われました。テレビは知的な遊びであるべきだ、という主張だったんですね。渋谷の若者が地べたに座る風潮を、霊長類の歴史にさかのぼりながら取り上げたことを思い出します。あと久米さんはキャスターと名乗らず、司会者だとずっと言ってきたのは『他の出演者をよく見せるのが司会者』という考えがあった、と個人的には理解しています
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