日本人優勝は14年ぶり、35キロからの失速を克服 男子マラソンが飛躍した今年
2018年12月05日
先頭争いを展開していた36キロ過ぎ、給水を終えると服部はわずかにペースを上げた。レース後本人は「スパートのイメージはなかった。少しリズムを変えて勝負してみようと思っていました」と話したが、ツェガエ(エチオピア)、メセル(エリトリア)がみるみる離れて行く。結果的にはライバルを引き離すスパート地点となったが、服部が「勝負」と口にしたのは、36キロからこそ、過去3度のレースに置いての鬼門だったからだろう。勝負に挑んだとすれば、エチオピア勢ではなく、自分自身の過去のレースに対してではないか。
マラソンレースの高速化が進み、かつてのように前半抑えて後半ペースを上げる組み立ては非常に難しく、そもそもハイペースでスピリットを刻み、さらに35、あるいは40キロからギアを一段上げる、そうしたレースが世界のスタンダードとして求められる。服部はこれまで常に35キロ以降になると失速し思うような結果がついては来なかった。ベスト2時間9分46秒も13位と、練習をレースで活かせなかった一因は、35キロからのマラソンのまとめにあったと分析している。
給水の後、ストライドは変えないまま、腕と脚のピッチを上げる。解説していた瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーも「このフォームでこんな速いの?」と、時計を見ながら驚いていたように、月間1000キロ以上を走り込んだなかで築いた、強いフォームが「鬼門」からフィニッシュ、2時間9分台から一気に2時間7分27秒の自己新へと服部の背中を押した。
ゴール後は、「大迫選手たちとはまだまだ(2時間6分台の設楽、井上)タイムはイマイチ」と話していたものの、リズムを変えた35キロから40キロは14分40秒でカバーしており、これは10月、大迫傑(すぐる、27=ナイキオレゴンプロジェクト)が2時間5分50秒の日本記録をマークしたシカゴのレースでの30~35キロ(14分42秒)、今年2月、設楽悠太(26=HONDA)が日本記録を塗り替えた際の同区間の15分11秒よりも速い。
記録は7分台だったが、約半世紀ぶりに気温が20度を超えたという気象条件と、世界陸上銀メダリストの2位・ツェガエに1分27秒もの差をつけて優勝をもぎ取った点を加味すれば、日本記録をマークした2人に勝るとも劣らないマラソンである。
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