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大場吾郎さん「番組の幼稚化が進んだ」[21]

番組の海外展開は拡大しているが、国の好感度に連動するとは限らず

川本裕司 朝日新聞社会部記者

 大場吾郎さん 佛教大学教授(日本テレビの元ディレクター)

 --テレビ番組の輸出が注目されています。

拡大番組の国際展開について研究している佛教大教授の大場吾郎さん
 「1960年代に番組販売や番組交換が始まったのは、国際的に認められることへの機運が高まっていたからでした。利益よりも、とにかく海外に番組を出すことが目標となり、日本を他国に理解してもらうためにも、海外展開することは良いことだという考えでした。国内向けに放送したものを二次利用として海外に提供するという姿勢でした」

 --その後も順調だったのでしょうか。

 「採算性という視点では、国際市場で競争力のある番組は限られており、壁にぶち当たりました。アニメでは60年代に『鉄腕アトム』などがアメリカに販売され、70年代になるとヨーロッパやアジアにも広がりました。中国では80年代に広まったようですが、『一休さん』などは今も人気のあるキャラクターとなっています。ただ全体としては国内の放送産業が順調に成長していたこともあり、海外展開にさほど積極的とはいえず、低迷期が続いたといえます。一方で、TBSのバラエティー番組『風雲!たけし城』のように、企画や演出方法とセットで売るフォーマット販売も出てきました」

 --注目した海外展開はありましたか。

 「90年代初頭以降にアジアで日本のドラマブームが起きたことです。香港のスターTVというアジア向けの衛星放送で日本のドラマが放送されるようになり、広がりを見せました。フジテレビの『東京ラブストーリー』が大ヒットし、同じフジの『101回目のプロポーズ』や『ひとつ屋根の下』が続き、中華圏の若者に人気を呼びました。ストーリーや世界観が共感を招いたうえ、形成されてきた中産階級のライフスタイルにフィットしたもので、日本の放送局が積極的に売り込んだ成果というわけではありませんでした。しかし、2000年代に入ると、日本のドラマブームは過ぎ去りました。韓国や台湾など他国のドラマ制作力が上がった一方で、日本のドラマは費用対効果の悪さが買い手に敬遠され始めました。ドラマの内容も、夢を見るよりも現実に向き合う作品が多くなったためか、アジアではあまり見られなくなりました。日本の視聴者に受けるものと、アジアの視聴者に受けるものが離れてきたのでしょう」

 --海外展開のポイントはどこにあるのでしょうか。

 「日本でギャラクシー賞を取ったからといって、海外で評価されるとは限りません。番組内容のクオリティーと海外での商品力は別物です。一方、2013年にフジテレビのCS(通信衛星)チャンネルで深夜に放送されたドラマ『イタズラなKiss~Love in TOKYO』は国内よりもアジアの中華圏で大きな反響を呼びました。もともとは違法動画で視聴されていたのですが、人気に火がついたとき、フジが正規のネット配信に切り替えました。このようなスピード感は大切でしょう。また、アニメは子ども向け番組における基準が日本とは異なるため、暴力シーンなどが欧米などでは問題視されることがありましたが、テレビ東京の『ポケットモンスター』の成功が大きかったと思います。海外でもキャラクターグッズやゲームの売り上げにつなげ、番組そのものでなく知的財産物としてのビジネス展開ができることを示しました。 ・・・ログインして読む
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筆者

川本裕司

川本裕司(かわもと・ひろし) 朝日新聞社会部記者

朝日新聞社会部員。1959年生まれ。81年入社。学芸部、社会部などを経て、2006年から放送、通信、新聞などメディアを担当する編集委員などを経て、19年5月から大阪社会部。著書に『変容するNHK』『テレビが映し出した平成という時代』『ニューメディア「誤算」の構造』。

 

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