2018年12月12日
12月6日からカナダのバンクーバーで開催されたGP(グランプリ)ファイナルは、紀平梨花が初出場で初優勝を遂げた。
女子が日本人3人、ロシア人3人という顔ぶれになったのは、ほぼ予想通りだった。だが違うのはその顔ぶれである。ロシアからはアリーナ・ザギトワ、エリザベータ・トゥクタミシェワ、ソフィア・サモデュロワの3人が進出。当然いるべき名前が入っていない。
平昌オリンピックでは、僅差で同じコーチの後輩であるアリーナ・ザギトワに敗れて2位に終わったメドベデワ。
「私は氷の上でやれることはすべてやりきった。だから後悔はありません」と、会見では気丈にふるまっていた。
その彼女が5月にカナダのブライアン・オーサー・コーチのもとに移籍することを発表。だがこのニュースは、彼女の祖国では好意的に受け入れられなかった。
「平昌でメドベデワが2位に終わったとき、ロシア国内では彼女のほうが金メダルに相応しかったという声が主流でした。ザギトワはまだシニアに上がったばかりで知名度もそれほどなく、次(北京)のオリンピックでも良かったのではないか。そんな意見がたくさん聞かれ、ロシア国民はメドベデワに同情的だった。その空気が一気に変わったのが、彼女がカナダに拠点を移すと発表してからです」
旧知のあるロシア人記者は、そう説明してくれた。元のコーチのエテリ・トゥトベリーゼは裏切り者扱いをされ、他の関係者から厳しい批判の声も報道された。
もちろん長年師事したコーチのもとを離れることは、簡単なものではない。場合によっては感情の行き違いが表に出ることもあるが、ここまで激しい反応が起きたのには事情があった。
日本の選手にとって、海外のコーチに師事することは少しも珍しいことではない。
もちろん基礎技術は日本のコーチが与えたものだが、オリンピックチャンピオンになった時の荒川静香はニコライ・モロゾフ、羽生結弦はブライアン・オーサーに師事していた。昨シーズン(2017-18)には、本田真凜がラファエル・アルトゥニアン(アメリカ)のもとへ移っている。これまで日本のトップ選手の多くが、競技人生のうちの少なくても何年間か海外のコーチの指導を受けてきた。
何も日本だけが特殊なわけではない。ネイサン・チェン(アメリカ)を指導しているラファエル・アルトゥニアンはカリフォルニアを拠点にしているが、元々旧ソ連ジョージア出身である。いまやスポーツの世界はボーダーレスで、必要とあらば国境を越えて指導者を求めるのが当たり前なのだ。
その当たり前が未だに普及していないのが、ロシアである。
有料会員の方はログインページに進み、デジタル版のIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞社の言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください