
ロシアからカナダに拠点を移してバッシングされたエフゲニア・メドベデワ
12月6日からカナダのバンクーバーで開催されたGP(グランプリ)ファイナルは、紀平梨花が初出場で初優勝を遂げた。
女子が日本人3人、ロシア人3人という顔ぶれになったのは、ほぼ予想通りだった。だが違うのはその顔ぶれである。ロシアからはアリーナ・ザギトワ、エリザベータ・トゥクタミシェワ、ソフィア・サモデュロワの3人が進出。当然いるべき名前が入っていない。

平昌オリンピックで金メダルのアリーナ・ザギトワ(ロシア、左)と銀メダルのメドベデワ
平昌オリンピック銀メダリストで、2016年と2017年の世界チャンピオンでもあるロシアのエフゲニア・メドベデワが、初めてGPファイナル進出を逃したのである(2017年はケガで欠場)。
平昌オリンピックでは、僅差で同じコーチの後輩であるアリーナ・ザギトワに敗れて2位に終わったメドベデワ。
「私は氷の上でやれることはすべてやりきった。だから後悔はありません」と、会見では気丈にふるまっていた。
その彼女が5月にカナダのブライアン・オーサー・コーチのもとに移籍することを発表。だがこのニュースは、彼女の祖国では好意的に受け入れられなかった。
「平昌でメドベデワが2位に終わったとき、ロシア国内では彼女のほうが金メダルに相応しかったという声が主流でした。ザギトワはまだシニアに上がったばかりで知名度もそれほどなく、次(北京)のオリンピックでも良かったのではないか。そんな意見がたくさん聞かれ、ロシア国民はメドベデワに同情的だった。その空気が一気に変わったのが、彼女がカナダに拠点を移すと発表してからです」
旧知のあるロシア人記者は、そう説明してくれた。元のコーチのエテリ・トゥトベリーゼは裏切り者扱いをされ、他の関係者から厳しい批判の声も報道された。
もちろん長年師事したコーチのもとを離れることは、簡単なものではない。場合によっては感情の行き違いが表に出ることもあるが、ここまで激しい反応が起きたのには事情があった。