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伏見稲荷大社の注連縄をなう京都美山の里人

正月の神事に奉納する伝統の匠の技と若い有志の活動

薄雲鈴代 ライター

 毎年270万人からの初詣の人で賑わう京都・伏見稲荷大社。全国に3万社あるといわれるお稲荷さんの総本宮である。一の鳥居前には、金色の稲穂をくわえた狛犬ならぬ白狐像が見える。イナリとは‘稲成り’が転じたといわれるとおり、五穀豊穣(家業繁盛)を祈願する社である。

千本鳥居は幸せのしるし

 御神体は稲荷山そのもの。だから本殿に参拝するだけではなく、その奥深く‘お山めぐり’ができ、行く先々に、無数の祠、狐神像、鳥居が奉納されている。

 山内をゆくと、外国人観光客に人気の千本鳥居を通って奥社へとむかい、さらに三つ辻、四つ辻と上がり、一の峰、二の峰、三の峰とつづく。なかでも鳥居がつづく参道は、艶やかな朱色のトンネルのようで、パワースポットとして崇められている。鳥居は、願い事が成就したしるしとして御礼奉納されたものであるから、プラスの‘陽の気’が満ちているのもうなずける。

拡大伏見稲荷大社本殿に長さ8メートルに注連縄を張る神職たち=2013年12月26日、京都市伏見区
 さても、元旦から初詣の人々で盛大だが、なかでも正月5日の大山祭は、古式ゆかしく厳かに行われる。注連縄(しめなわ)の神事ともいわれ、早朝、稲荷山上の七神蹟の玉垣に注連縄を張り、霊石の上に神饌を供え、神さまを迎える。

 注連縄を張ると、そこは清らかな神域となり、安心して神さまが降りてこられるしるしとなる。この伏見稲荷の注連縄は、京都美山町にある鶴ケ岡の人々によって綯(な)われている。

美しい里・鶴ケ岡の注連縄づくり

 京都市内から国道162号線をゆき、北山杉の連なる景色を過ぎ、南丹市美山町にある鶴ケ岡へは車で50分。その道は福井高浜に通じ日本海へ抜ける。‘西の鯖街道’といわれた主要道である。車で通るたびに思うのだが、長閑(のどか)できれいな山里である。

 美しい処ではあるけれど、寄る年波には勝てぬ暮らしの中で、過疎化が心配されている。2016年には美山町にあった5つの小学校もひとつに統合された。いまや美山町全域で小学生は135人。

 地名にあるとおり、美しい山景色のふもとにあって、廃校にはなったものの美山町の小学校はどれも素晴らしい木造校舎だ。まるで映画のセットにあるような風情で、ここで伸び伸びと子どもを育てられたら最高だと思わず夢見てしまう。しかし、いまはそこに通う子どもたちはいない。

 このまま埋もれさせてはいけないと、地元の若い有志たちが頑張っている。今回出会った鶴ヶ岡振興会の古北真里さんも、美山に若い子育て世代を呼び寄せようと奮闘している素敵な女性だ。

 その鶴ヶ岡振興会の主催で、椛(かば)の美しい晩秋の候、廃校になった旧鶴ケ岡小学校の教室で、山里の暮らし伝承教室「しめ飾づくり」講座が開かれた。 ・・・ログインして読む
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筆者

薄雲鈴代

薄雲鈴代(うすぐも・すずよ) ライター

京都府生まれ。立命館大学在学中から「文珍のアクセス塾」(毎日放送)などに出演、映画雑誌「浪漫工房」のライターとして三船敏郎、勝新太郎、津川雅彦らに取材し執筆。京都在住で日本文化、京の歳時記についての記事多数。京都外国語専門学校で「京都学」を教える。著書に『歩いて検定京都学』『姫君たちの京都案内-『源氏物語』と恋の舞台』『ゆかりの地をたずねて 新撰組 旅のハンドブック』。

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