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全日本選手権の注目は高橋大輔と個性の揃った女子

田村明子 ノンフィクションライター、翻訳家

4年ぶりに競技に復帰してきた高橋大輔高橋大輔の華麗なスケートがまた全日本選手権で見られる

 いよいよ12月21日から、大阪・門真市で2018年フィギュアスケート全日本選手権が開催される。男子は羽生結弦が右足首の靭帯損傷によって、残念ながら欠場。2年連続優勝してきた宇野昌磨が今回もタイトルを守ることが予想される中で、宇野がノーミスの演技を見せることができるかどうか、そして他の男子がどのくらい宇野に迫るかが焦点になりそうだ。

 中でも注目はもちろん、4年ぶりに競技に復帰してきた高橋大輔である。近畿大会で3位、そして西日本選手権で優勝を果たして無事に全日本への出場権を手にした高橋。友野一希、田中刑事らと表彰台を競うことになるだろう。だが順位よりも何よりも、世界で高橋大輔にしかできないスケートの真髄を見せてくれることを期待したい。

紀平梨花に集まる期待

 女子は、レベルの高い白熱戦が期待できる。注目の焦点は、やはりGP(グランプリ)大会を2連勝し、GPファイナルのタイトルを手にした16歳の紀平梨花だろう。

GPファイナルのタイトルを手にした16歳の紀平梨花GP(グランプリ)ファイナルで初出場初優勝した16歳の紀平梨花

 彼女の長所は、3アクセルという武器を持ちながらも、それに頼らなくても表彰台にあがることができる技術と表現力を持っていることだ。難易度の高い3+3のコンビネーション、ポジションと軸がきれいなスピン、そして何より指先から足の爪先まで神経が行き届いた振付をこなす能力。今年がシニアデビューとはとても思えない完成度の高さは驚くほどだ。これに3アクセルを加えたら、まさに鬼に金棒。彼女がSPとフリーをノーミスで滑りきったら、現在の女子の中で紀平に勝てる選手はおそらくいない。

 ジュニアの頃から注目されてきた紀平だが、シニア国際デビューの年にここまでの成績をあげるとはおそらく誰も予想していなかった。全日本選手権のジャッジパネルも、腰をすえて採点せざるを得ないだろう。

日本女子の長所は1人ひとりの個性

 バンクーバーのGPファイナルで話をしたあるISU(国際スケート連盟)関係者が、日本の女子の層の厚さを絶賛した。

 「ロシアと違うのは、日本の女子は全員タイプが全く異なるところ。1人ひとりの選手の個性があるところが面白いと関係者の間でも評判です」と語る。

 確かにここ何年か、次々と登場してトップに上ってきたロシアの女子たちは、それぞれの個性がありながらも滑りのタイプは似ていた。スピードがあり、ジャンプのスプリングが良い一方で、フリーレッグ(着氷に使わない方の足)の位置が雑でイクステンションのキープの時間が短い。また勢いをつけて蹴り上げるように足を上げるところなど、長所も短所も、共通したものがある選手が多く、欧米では「クッキー型から出てきたようだ」と手厳しく評価する記者もいる。

 その一方で、日本の選手は一人ひとりのタイプがまったく違う。

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