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ゴーン氏勾留延長却下が大ニュースになる特殊な国

五十嵐二葉 弁護士

外国世論が日本の司法を是正したか

 ゴーン氏逮捕以来、外国の反応は厳しかった。

 フランスのマクロン大統領は、11月30日にアルゼンチンで開かれたG20の会場で安倍首相と会談した。安倍首相が語らなかったので、日本では報じられなかったが、朝日新聞は在パリ記者報として「仏大統領府によると、マクロン大統領は安倍首相に、ゴーン前会長の司法手続きが『きちんと進められる』ことへの確認を求めたという」と記事にした(12月2日付)。

 東京拘置所に収監されたゴーン氏には、直後にフランス、次いでブラジル、レバノンの各駐日大使が面会に行っている。

 ゴーン氏の両親の出身国で、ゴーン氏も少年期に住んでいたという「レバノンのバシル外相が27日駐レバノンの山口又宏日本大使を呼び出して懸念を伝え」「『レバノン政府は捜査に強い関心を持っている』と伝え」「ゴーン氏の拘束には多くの疑問点があるとして『透明で法律に則した捜査が行われているか、フランスなど関係国と共に確認する』と述べ、事件についての説明も求めたという」(11月29日付読売新聞 カイロからの特派員報道として)

 日本人がフランスで逮捕されても日本の首相が相手国大統領にじきじき「司法手続きが『きちんと進められる』ことへの確認を求める」ことはないだろう。

 外交上異例の批判に加えて、フランスのメディアをはじめ、他の国のメディアも、逮捕当初から繰り返し日本の刑事手続きを批判し、日本のメディアがそれを伝聞で伝えた。

 「フランスのメディアは21日『弁護士が事情聴取に立ち会えず(当面は)家族との面会もままならない』と一斉に報じた」など(11月28日毎日新聞「仏紙勾留条件を批判」)「仏紙フィガロは「『ひどい拘置所に移された』……『地獄だ』と伝えた」(11月24日朝日新聞)「『カルロス・ゴーンは日本ではテロリストより厳しく扱われている』。フランスのテレビ番組では、出演者からこうしたコメントも出た」(11月28日毎日新聞夕刊)。

 フランスばかりでなく、利害関係のない国を含めて、メディアの厳しい批判が続いていた。

 米紙ウォールストリート・ジャーナルが、11月27日「日本の司法制度のあり方や、逮捕に至るまでの日産の対応に疑問を呈した」社説を掲載した。「厳しい尋問を意味する」inquisitionという表現を使い『The Gohsn inquisition』と題された」社説で、「逮捕後起訴されずに勾留され、弁護士の同席なしに尋問を受けているとして『共産主義の中国の出来事か? 資本主義の日本だ』と皮肉った」(11月29日付読売新聞)。

 inquisitionを読売新聞は「厳しい尋問」と訳したが、もともとは「針の部屋」など死者も出た中世の異端審問のことで、今では拷問の意味で使われる。

 東京地裁の勾留延長却下決定は、これらの外国の反応が影響を与えた結果だったのだろうか。

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筆者

五十嵐二葉

五十嵐二葉(いがらし・ふたば) 弁護士

1932年生まれ。68年弁護士登録。山梨学院大学大学院法務研究科専任教授などを歴任。著書に「刑事訴訟法を実践する」など。

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