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連続殺人犯に共通する罪の意識の欠落

面会した殺人事件被告から見える姿 連続犯の「存在が邪魔であれば排除」という論理

小野一光 ノンフィクションライター

 私は2018年11月末に『人殺しの論理』(幻冬舎)というタイトルの新書を上梓した。同書のサブタイトルは〈凶悪殺人犯へのインタビュー〉となっており、雑誌メディアならではの殺人事件取材の方法や、私が面会した5人の殺人事件被告(当時)とのやりとりを記している。

 そこで取り上げた5人は以下の通り。

北九州監禁殺人事件で監禁場所のマンションに家宅捜索に入る捜査員ら=2002年3月、北九州市小倉北区
 ●04年に福岡県大牟田市で家族3人とその友人1人が殺害され、加害者家族4人の死刑が確定した〝大牟田4人殺人事件〟の実行犯である北村孝紘(後に養子縁組で井上姓)。

 ●02年に福岡県北九州市で発覚した、3世代の家族6人と監禁された男性1人が殺害された〝北九州監禁連続殺人事件〟の主犯で死刑が確定した松永太。

 ●11年に兵庫県尼崎市で発覚した、事件化されただけで8人の死者が出た〝尼崎連続変死事件〟で、自殺した主犯・角田美代子の戸籍上の次男と結婚した角田瑠衣。

 ●前出の北村孝紘に紹介を受けたと、私に自著の出版への協力を依頼する手紙を送ってきた女性刺殺犯である山口浩一(仮名)。

 ●遺産を得る目的で結婚や交際をしていた、近畿地方在住の4人の高齢者への殺人や強盗殺人未遂容疑で14年に逮捕され、1審で死刑判決を受けた〝近畿連続青酸死事件〟の筧千佐子。

 これらの事件については、山口浩一を除く4人が、複数の被害者を殺めたとして罪を問われている。この原稿の執筆時点で、北村孝紘と松永太の死刑が確定しており、筧千佐子は1審で死刑判決を受けて控訴中である。また角田瑠衣は1審の懲役23年判決を控訴せず、刑が確定して受刑者となっていた。

 彼らとの個別のやり取りについては、拙著のなかで詳(つまび)らかにしたが、これまでに取材した〝人殺し〟は他にもいる。例えば現在は死刑が確定している、〝福岡一家4人殺人事件〟の魏巍や、〝大阪個室ビデオ店放火事件〟の小川和弘などとの面会を繰り返してきた。さらにいえば、本人との面会こそ叶わなかったが、〝福岡3女性連続強盗殺人事件〟の鈴木泰徳(死刑囚)や、〝大阪姉妹殺人事件〟の山地悠紀夫(元死刑囚)といった、死刑言い渡し事案の対象となる被告らの周辺取材にも携わった。

 当初、私は殺人犯に共通する要素はないかということを探ろうとしていた。だが、家庭環境や経歴、それに犯行に至る経緯などは千差万別なのである。ただそこには、身勝手な理由で犯行に及んだという現実があるに過ぎなかった。

 とはいえ、数多くのケースに当たったことで、被害者が1人だけの殺人犯と、被害者が大量に出ている連続殺人犯との間にある、大きな隔たりは浮かび上がってきた。つまり

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