人生経験は医師にとってマイナスにならない 国家試験合格率重視の医学部の理屈
2019年01月04日
東京医科大学の不正入試に端を発して、多くの大学医学部、医科大学で、女子受験生や多浪生に不利な採点をしていたことが明らかになっている。
たとえば、この発覚の端緒となった東京医大の内部調査委員会の報告書によると2次試験の小論文で、女性と4浪以上の受験生には、一律に取った得点に0.8をかけたうえで現役~2浪男子で20点、3浪男子で30点それぞれあった加点が一切なしという操作が行われていた。
その後の文科省による医学部のある81校の調査についての産経新聞の取材では、関係者の談話としてであるが、「このうち点数化されにくい私立大の面接で、性別や浪人年数により合否判定に差異があると疑われる事例が見受けられた」と報じられている。
前回、女子受験生の問題を取り上げたので、今回は多浪生について問題にしたいと思う。
私が医学部の教授そのほか、医学部の関係者から聞いた話では、多浪生をなるべく入学させたくない理由は、①何回も浪人するような低学力あるいは試験に弱い学生が入学すると、大学に入ってからの進級も難しいし、医師国家試験に合格できない可能性が高い②年齢が高いのに医学部に入ろうとする学生は大学での出世をあきらめているためか、研究もちゃんとしないし早めに開業する可能性が高い、というようなものが主なものだった。
確かに文科省も、厚労省も、大学の医学部の教育の評価として、国家試験の合格率を重視しているし、それに応じて補助金の額は影響を受けるので、私立大学に限らず、独立法人化した国公立の大学も国家試験の合格率に非常にこだわっているのは事実だ。
実際、そのために教養課程が大幅に短縮されたり、最後の1年を実質国家試験対策に充てたりと、医学教育が大きく歪められているのを問題視する声も強い。
患者の側にしても、学力の低い、金持ちの開業医の子弟が、何回も受験してやっと医学部に入ったような人に、医師になってもらいたくない、自分は診てもらいたくないという偏見があるのは、医師として実感している
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