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沖縄、徴用工問題に共通する安倍政権の上から目線

「唯一の解決策」と辺野古基地建設を強行、韓国への批判を強める外相ら

辰濃哲郎 ノンフィクション作家

「粛々と」に映し出される同じ構造

拡大辺野古での基地建設で埋め立てが進む、米軍キャンプ・シュワブの沿岸=2018年12月3日、沖縄県名護市
 彼の言う「粛々と」とは、菅義偉官房長官が、辺野古新基地建設は「唯一の解決策」だから工事を「粛々」と進めると繰り返し使ってきたフレーズだ。徴用工の問題は、沖縄の辺野古新基地建設を巡る問題と同じ構造なのだと言いたかったのだ。

 世界一危険な基地と言われる沖縄・普天間基地の返還に日米が合意した後の99年、沖縄県知事だった稲嶺恵一氏は普天間基地の代替として辺野古基地の受け入れを決めた。政府はこれを理由に「唯一の解決策」と説明するのだが、稲嶺氏の辺野古受け入れには条件があったことは忘れられがちだ。新基地は軍民共用空港とし、米軍の使用については15年を期限とすること。政府もこれを重く見て米国と話し合うことを約束したが、なぜか小泉純一郎政権の時に、この条件が消えてしまった。

 さらに言えば、稲嶺氏を継いだ仲井眞弘多知事が2013年に安倍晋三首相らと会談した際には、辺野古の埋め立てを承認するに際して普天間飛行場の「5年以内の運用停止と早期返還」を要望している。これに対して、安倍首相は「ご要望は沖縄県民全体の思いとしてしっかりと受け止め、日本政府としてできることはすべて行うというのが安倍政権の基本姿勢であります」と応じた。だが、それも15年には「政府がやり取りした言葉であって、合意されたわけではない」と国会で中谷元防衛相(当時)が答弁している。一連の経緯は、翁長雄志の著書『戦う民意』で書かれているが、仲井眞氏と首相との約束は空手形だったことになる。

 住宅密集地にある普天間基地の危険性除去は緊急の課題であることは間違いない。だが、これまで沖縄に負担を強いてきた戦後の経緯や、政府と交わした約束さえ軽んじられていることに、沖縄は怒っているのだ。この辺野古問題の根底にあるのは、まさに踏まれ続けてきた沖縄の尊厳だ。それを一顧だにせず「唯一の解決策」「粛々」と神経を逆なでしてきたのが安倍政権だった。

 過去の歴史や議論の積み重ねを無視して、都合の良いフレーズを切り取ってアピールするのは安倍政権の真骨頂だ。一部でも事実だから文句も言えないが、その事実の背景にあるもう一つの側面には思いを馳せないから、言われたほうの尊厳が侵される。今回、韓国大法院が徴用工への慰謝料を認めた判決への対応も、沖縄・辺野古のそれと似ている。

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筆者

辰濃哲郎

辰濃哲郎(たつの・てつろう) ノンフィクション作家

ノンフィクション作家。1957年生まれ。慶応大卒業後、朝日新聞社会部記者として事件や医療問題を手掛けた。2004年に退社。日本医師会の内幕を描いた『歪んだ権威』や、東日本大震災の被災地で計2か月取材した『「脇役」たちがつないだ震災医療』を出版。

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