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拡大年末年始の相談テント。奥が医療相談、手前が福祉相談

 前回、「年越し派遣村10年。今考える成果と限界」と題して、2008年から2009年にかけての年末年始の活動を振り返ったが、それから丸10年が経った今回の年末年始も、全国各地の路上で民間団体による「越年越冬」の活動が実施された。

 「越年越冬」とは、生活保護など公的支援の窓口が閉鎖する年末年始に、路上に取り残された形になるホームレスの人々を支えるため、連日実施される炊き出しや夜回り、医療・福祉相談等の集中的な支援活動を指す言葉である。

 もともとは、東京・山谷や大阪・釜ヶ崎など寄せ場(日雇労働の求人業者と求職者が多数集まる地域)において、年末年始に仕事がなくなる日雇労働者を支えるため、日雇労働者の労働組合などが中心となって実施してきた「越年越冬闘争」に由来している。普段は日雇労働に従事し、「ドヤ」と呼ばれる簡易旅館に宿泊している労働者が、年末年始の休みになると、仕事がなくなって路上生活に陥るという状況が広く見られたためだ。

都市全体が寄せ場化

 2007年に「ネットカフェ難民」が社会問題になる以前から、寄せ場の日雇労働者や路上生活者への支援に関わる者の間では、「都市全体が寄せ場化している」ということが共通認識となりつつあった。日本最大の寄せ場、大阪・釜ヶ崎で支援活動を続けてきた生田武志は、再三、「日雇労働者がリハーサルし、フリーターが本番をしている」と警鐘を鳴らしてきた。

 つまり、「日雇い労働に従事しながらドヤに泊まる」という寄せ場特有の状況が都市全体に拡散し、「派遣などの非正規雇用に従事しながらネットカフェに泊まる」という状況が都市の中心部である繁華街で見られるようになったのである。

 実際、新宿や渋谷、池袋などの繁華街で行われている「越年越冬」の活動では、日を追うごとに炊き出しに集まる人が増えるという現象が見られる。12月の30日や31日には、まだ貯金を切り崩して、ネットカフェ代をねん出できていた若者が、年が明けると所持金がなくなり、路上に出てくるという現象が毎年のように見られるのだ。

 とは言え、読者の中には「派遣切り」が吹き荒れた10年前と違い、「人手不足」と言われる現在の日本で、年末年始の数日間を乗り切るほどのお金を貯められないのは自己責任ではないか、と感じる人もいるかもしれない。

 私も先日、企業関係者が集まる会合でホームレス問題について語ったところ、参加者の中から「外国人労働者の受け入れを拡大しなければならないほど、人手不足の状況の中で、ホームレスになってしまう人は怠けているだけではないのか」という反応があった。

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筆者

稲葉剛

稲葉剛(いなば・つよし) 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任准教授

一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事。住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人。生活保護問題対策全国会議幹事。 1969年広島県生まれ。1994年より路上生活者の支援活動に関わる。2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。幅広い生活困窮者への相談・支援活動を展開し、2014年まで理事長を務める。2014年、つくろい東京ファンドを設立し、空き家を活用した低所得者への住宅支援事業に取り組む。著書に『貧困の現場から社会を変える』(堀之内出版)、『鵺の鳴く夜を正しく恐れるために』(エディマン/新宿書房)、『生活保護から考える』(岩波新書)等。

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