苦境の取次が出版社に取引条件の変更を求めるが厳しい反応、運賃協力金はアップ
2019年02月12日
書籍の取引については、出版社が定価の70%前後で取次に出荷、取次で8%、書店で22~23%をそれぞれ取り分とする基本形態が定着していた。ただ、出版社と取次、書店の取引条件は、出版社の歴史や規模、書店の販売力によって異なり、個別に決められている。取次の取り分は減る傾向にあるといわれ、ここ数年で中堅の取次の経営破綻も相次いだ。ネット通販大手のアマゾンジャパンは1月31日、出版社から書籍を直接購入する「買い切り」方式を年内に試験的に始めることを発表するなど、書籍流通にはさまざまな動きが出ている。
昨年度決算で取次業が初めて赤字となった日販は、書籍の取引条件を各出版社と見直す方針を決めた。
日販が3月、出版社に示した「書籍取引条件の見直しのお願い」では、「出版販売金額は2016年には1995年比で56%まで縮小。流通コストの抑制に努めてきましたが、弊社では書籍部門は過去20年来、赤字構造から脱却できておりません」と窮状を訴え、書籍の出荷価格引き下げの検討を依頼した。関係者によると、引き下げ幅は1%以下が多いといわれるが、3%の例もあるという。
日販の安西浩和専務は「書籍の取次は年間30億円の赤字だった。雑誌の取次の利益ではカバーできなくなり、構造的な面に切り込んだ。対象の出版社は赤字幅の大きい当初の100社から増やし交渉している。見直しは簡単なこととは思っていないが、この状態で2、3年続けることはできない」と話す。
9月末までの交渉の進展について、日販の中西淳一執行役員・仕入部長は「いい反応は半分以下」と難航を認めている。ただ、交渉を重ねることで協力する出版社が目立ってきているという。
同時に、雑誌の物流コスト上昇に伴う「運賃協力金」を仕入れ金額の0.55%から0.85%への引き上げ要請を始めたところ、出版社側はおおむね了承する姿勢という。
また、取次業で昨年度は5年ぶりの赤字となったトーハンも書籍の取引条件の見直しを出版社に求めているが、やはり厳しい反応が多いという。運賃協力金を引き上げる交渉については、10月末現在で300社以上と進め、約70%と妥結した。
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