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商店主らが知恵と技を伝授する「まちゼミ」(下)

自分の店以外を宣伝し広がるつながり、ライバルの同業者が仲間に

大矢雅弘 ライター

信用金庫職員が講師になり、お札勘定を指南した「まちゼミ」=2016年10月、福岡県飯塚市
 まちゼミをきっかけに、新たなビジネスに結びついたという例も少なくない。沖縄県浦添市で開かれている「浦添まちゼミ」で、「初心者の為の美味しい珈琲の淹れ方」の講座を開いているのは同市の喫茶店「K's coffee(ケイズコーヒー)」だ。今春で開業から5周年になる。

 夫婦で店を営む広田香さんによると、この講座を沖縄の伝統菓子「ちんすこう」の製造会社に勤める人の父親が受講した。その菓子製造会社では、それまで「ちんすこう」とインスタントコーヒーをコラボした商品を作っていたが、まちゼミでの出会いがきっかけになって、インスタントコーヒーから広田さんの店で焙煎(ばいせん)したコーヒー豆とのコラボに切り替わった商品が昨年6月に発売され、沖縄県内のコンビニエンスストアなどで販売されている。まちゼミとの出あいが生んだ新規事業といえよう。

 参加事業所の数が飛躍的な伸びをみせるまちゼミ。順風満帆の歩みのようにも見えるが、それを根底で支えているのは各地域で、まちゼミの立ち上げに向けて奔走する先導役の存在だ。

 北海道小樽市で、まちゼミおたるを企画したのは、市内で化粧品店「小町屋」を営む本田純子さん(63)。同市商店街振興組合連合会女性部のメンバーだ。商店街の活性化を手伝う「全国商店街支援センター」が発行している情報誌「EGAO」でまちゼミを知り、「これは絶対にやりたい」と思ったという。だが、助っ人は見つからず、自ら動くことを決断。真冬の厳しい寒さの時期も含め、本田さんがたった一人で半年以上もの時間をかけ、商店街の個々の店舗を一軒一軒訪ね歩き、まちゼミの有効性を訴え、説得して回ったという。

 その結果、昨年2月に第1回のまちゼミおたるが実現し、28店舗が29講座を開講した。参加者の反応はアンケートから「90%以上の人が満足している。またやってほしいという要望がものすごく多い」。本田さんはさらに多くの店主に呼びかけて、昨年10月15日から1カ月間、開講した2回目は8店舗・9講座が増えたという。「昔は隣の同業者がライバルだったけど、いまはみんながまちゼミ仲間ということで、すごくつながっている。お客さんとのつながりもすごく楽しい」と本田さん。松井さんは本田さんの行動力に「リーダーが地域を変える」と痛感したという。

 2016年1月、全国の地方紙などが地域活性化に挑む団体を表彰する「第6回地域再生大賞」で「岡崎まちゼミの会」が準大賞に選ばれた。

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