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学校と教育委員会、児童相談所は何をしたのか

千葉・野田に小4虐待死 またも失われた子どもの命

大久保真紀 朝日新聞編集委員(社会担当)

拡大亡くなった栗原心愛さん=同級生提供
 また幼い命が失われました。

 栗原心愛(みあ)さん、10歳。千葉県野田市の自宅の浴室で死亡し、父親(41)が傷害容疑で逮捕されました。

 まだ詳しいことはわかりませんが、これまでに明らかになったことだけを見ても、小学校も教育委員会も児童相談所もやるべきことをしていない、あるいはするべきではないことをしてしまっています。信じられないような対応の積み重ねに、あぜんとしています。

 報道されていることをまとめると、経緯は以下の通りです。

 2017年7月上旬 親族が父親から母親への暴力を沖縄県糸満市に相談。その際、「父親が心愛さんを恫喝している」と話す。父親は家庭訪問を拒否。8月中旬にも同じ親族から「子どもが心配」との相談があった

 9月1日 心愛さんが沖縄県から千葉県野田市立山崎小学校に転校。市は「支援が必要な家庭」と把握

 11月上旬 心愛さんが小学校のアンケートで「お父さんにいじめられた」と訴える

 11月7日 心愛さんの右ほおにあざ。小学校の聞き取りに心愛さんが「暴力を受けている」と答え、学校が野田市に報告。千葉県柏児童相談所が連絡を受け、一時保護を開始

 12月27日 柏児相が「市や親族からサポートが得られ、安全に生活できる見込みがついた」と判断し、一時保護を解除。心愛さんが親族の元で生活を始める

 2018年1月15日 野田市教委が父親に学校のアンケートのコピーを渡す

 1月17日 柏児相が親族の家を訪ね、支援状況などを確認。2月にも同様の確認

 1月18日 心愛さんが市立二ツ塚小に転校

 3月上旬 心愛さんが両親の元に帰る

 3月19日 柏児相が小学校で心愛さんに会い、状況を確認

 5月15日 小学校が柏児相に「特に不審な点は見られない」と報告

 2019年1月7日 父親が小学校に「沖縄にいる。曽祖母と一緒にいさせたいので15日から登校する」と電話

 1月11日 父親が小学校に「曽祖母の体調が悪い。1月いっぱい沖縄にいたい。2月4日に登校する」と電話

 1月21日 小学校から柏児相に「2月4日まで、沖縄に帰省している」と電話

 1月24日 父親が「娘の意識と呼吸がない」と110番通報。救急隊が心愛さんの遺体を自宅の浴室で発見

 1月25日 父親を心愛さんへの傷害容疑で逮捕

 まず2017年夏に親族から虐待相談が寄せられた糸満市の対応です。家庭訪問を拒否され、「虐待が確認できなかった」として、その後なんの対応もしなかったそうです。親族からは8月中旬にも相談があったのに、です。9月に一家は転居しますが、自分のところと関係なくなれば、「それでおしまい」との意識はなかったでしょうか。

 次に野田市です。父親の母親へのDV情報があったために要支援家庭という認識はもったそうです。11月初めに小学校で心愛さんの右ほおにあざがあるのを気づき、小学校が野田市に虐待の疑いがあると連絡。市から柏児相に連絡して、心愛さんは一時保護されました。当初は父親を怖がっていた心愛さんが「優しいときは好き」と言い、自宅に帰りたいと言うようになったことから、年末に一時保護を解除したといいます。

 しかし、児童相談所の一時保護所は決して居心地がいいところではありません。学校には通えず、友だちには会えません。多くの子どもは2週間もいると、「家に帰りたい」というのがふつうです。また、子どもはどんな親でも好きです。しかも「優しいときは好き」という言葉を、児相はどう受け取ったのでしょう。もし、「家に帰りたい」「好き」という子どもの言葉をそのまま鵜呑みにして、一時保護を解除するという判断をしたのなら、専門知識に欠けているとしかいいようがありません。 ・・・ログインして読む
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筆者

大久保真紀

大久保真紀(おおくぼ・まき) 朝日新聞編集委員(社会担当)

1963年生まれ。盛岡、静岡支局、東京本社社会部などを経て現職。著書に『買われる子どもたち』、『こどもの権利を買わないで――プンとミーチャのものがたり』、『明日がある――虐待を受けた子どもたち』、『ああ わが祖国よ――国を訴えた中国残留日本人孤児たち』、『中国残留日本人』など。

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