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ゴーン被告の長期勾留と世界のスタンダード

逮捕から3カ月、日本は取り調べが厳しいが身柄拘束者数は少ない

河合幹雄 桐蔭横浜大学法学部教授(法社会学)

勾留理由の開示手続きに出廷した日産自動車前会長のカルロス・ゴーン容疑者=2019年1月8日、東京地裁、絵と構成・小柳景義
 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告の保釈が認められず、長期の勾留が続いている。それに対して「証拠隠滅のおそれがある以上致し方ない」という擁護論がある一方、「国際スタンダードから著しく遅れた司法制度」といったような批判も聞こえてくる。どのように考えるべきか整理してみたい。

 明治維新以降、遅れている日本が西洋に追い付くイメージが、多くの知識人には刷り込まれてきた。そして、実際に多くの立法が、その必要性の説明として、西洋に追い付くことを理由としてあげてきた。欧化政策による日本の伝統の破壊は、当然、それに対する反発を免れず、第2次世界大戦の際には鬼畜米英とまで言われたように極端なナショナリズムが吹き荒れた。

 しかし、第2次世界大戦で敗北したことによって、やはり、日本はまだ遅れているという感覚は復活継続し、戦後の「奇跡の復興」を果たした後も、それは続いた。1967年の川島武宜の『日本人の法意識』は、「本当の西洋化」は少しも果たせていないことを指摘し、知識人の間に大きな共感を得た。その後、21世紀に入ったが、相変わらず、日本は遅れている式の言説が無反省にあたりまえのように語られてしまっている。これで良いのであろうか。

 なんとなく流されずに、現時点での日本の方針、戦略を、今、問わねばならない。そしてそのためには世界の正しい現状認識が前提となる。西洋が世界を支配していった植民地化の時代には、西洋列強に日本が支配されないこと、具体的には不平等条約の解消が目標であった。だから、列強に追い付けであったのである。

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