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想像力の欠如を露呈した障害者雇用の水増し(下)

多様な働き方、問われる特性を生かした配置やサポート、採用する側のあり方

町亞聖 フリーアナウンサー

 ここ数年、夏に訪れている風光明媚な田園風景が広がる新潟県長岡市にある廃校をリノベーションした「和島トゥー・ル・モンド」。決して交通の便が良いところではないのに予約の取れない人気レストランとパン工房がある。ここは長岡市で唯一の就労継続支援A型の指定障害者福祉サービス事業所で前述した障害者就労支援施設の一つである。“就労継続支援A型”とは障害によって一般企業で働くことが難しい人と雇用契約を結び、働く機会を提供したり就職のために必要な支援や訓練をする事業所のこと。

本当の自立のためにはクオリティーの高い仕事を……

 「本当に自立できるような賃金を得るためには生産性の高い仕事をしなければならない。だからこそ全ての面でクオリティーを高めている」と総支配人の斎藤篤さんは語る。“トゥー・ル・モンド”はフランス語で「みんなで」という意味だそう。健常者と障害者が区別なく働くレストランでは長岡産と新潟産の食材にこだわったここでしか味わえないフレンチを提供している。全国のA型事業所の平均賃金は74000円だが、「和島トゥー・ル・モンド」で働く人たちの給与は1万円以上上回っている。

 就労継続支援A型を利用している人は全国の3500事業所で約7万人、そして雇用契約を結ばないので最低賃金が保障されない就労継続支援B型を利用する人は約24万人いる。この就労継続支援B型の低工賃に関しては生産性の追求と生活支援などの社会福祉としての役割のバランスをどう考えるのかという議論もあり、障害者を取り巻く雇用の問題は法定雇用率さえ守れば解決するという単純なものではないのである。

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