メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

[26]住宅困窮へと追い込まれる原発事故避難者

支援団体が緊急ホットライン実施へ

稲葉剛 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

 東京電力福島第一原発の事故が発生してから、まもなく8年になる。

 今年2月、東京電力は福島第一原発2号機で装置を使い、溶け落ちた核燃料(デブリ)に初めて接触できたと発表した。高い放射線量によって人間が近づくことができないデブリの取り出し方法はまだ確立されておらず、事故から8年経っても収束にはほど遠い状況である。

住民の帰還政策を進める政府と福島県

 現在も避難生活を余儀なくさせられている人は、4万人を超えているが、政府と福島県は住民の帰還政策を進めている。避難指示区域は指示解除により順次、縮小しており、2017年3月末には区域外避難者(いわゆる自主避難者)への住宅無償供与が打ち切られた。

 住宅無償供与が打ち切られた区域外避難者は約12,000世帯にのぼる。新潟県の福島原発事故検証委員会生活分科会が民間借り上げ住宅に入居していた世帯の打ち切り後の住宅移転の動向を各都道府県に照会調査したところ、8割は福島県外で住み続けることを選択した。だが、今年3月末には国家公務員住宅に住む区域外避難者約130世帯が福島県と結んだ契約の期限切れにより退去を迫られ、激変緩和措置として民間賃貸住宅で避難を続ける2046世帯(一定収入以下の世帯)に対して支給されてきた月2万円の家賃補助も終了することになっている。

拡大原発避難者住宅問題・緊急ホットラインの案内
 こうした事態を受け、東京都内で避難者の生活支援、住宅支援を続けてきた「避難の協同センター」は、他団体と共同で2月28日(木)と3月2日(土)に「原発避難者住宅問題・緊急ホットライン」を実施する。

 2017年3月末の住宅無償提供打ち切りの際には、追い詰められた避難者の中から自殺者やホームレス化する人も出てしまった。

 そうした事態を繰り返さないために、避難者への支援を続ける「避難の協同センター」事務局長の瀬戸大作さんと、自身も原発事故避難者で同センターの世話人を務める熊本美彌子さんに現状と課題をうかがった。


筆者

稲葉剛

稲葉剛(いなば・つよし) 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事。認定NPO法人ビッグイシュー基金共同代表、住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人。生活保護問題対策全国会議幹事。 1969年広島県生まれ。1994年より路上生活者の支援活動に関わる。2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。幅広い生活困窮者への相談・支援活動を展開し、2014年まで理事長を務める。2014年、つくろい東京ファンドを設立し、空き家を活用した低所得者への住宅支援事業に取り組む。著書に『貧困パンデミック』(明石書店)、『閉ざされた扉をこじ開ける』(朝日新書)、『貧困の現場から社会を変える』(堀之内出版)等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

稲葉剛の記事

もっと見る