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現金からスマホへ、個人情報を巡る遺失物の世界

平成は何を忘れてきたのだろう

武田徹 評論家

撮影・伊ケ崎忍拡大撮影・伊ケ崎忍

電子決済でスマホが現金の代わりに

 そして個人情報を巡って遺失物の世界はもっと変わっていくだろう。

 たとえば現金の拾得額は開高の時に「2億8千万エン」と記載されていた。それが今や約37億円だ(2017年)。株のバブルは破綻したが、まだ世間的には好景気の気分が持続していた1990年が拾得金額で史上最高となり、以後は景気の縮小とともに額が減少していたが、2016年に36億円となって四半世紀ぶりに記録を更新、翌年にもそれを更新した。

 一方、37億円の拾得額に対して、遺失届が出された現金総額は83億円だ。遺失届が出されていない現金が拾われている可能性もあるが、そこは無視した単純計算で差額は46億円。これは未だに発見されずにどこかで眠っているか、発見者にネコババされてしまった金額ということになる。

 ネコババされずに拾得された37億円に関してはうち27億円が遺失者に返還されている。これも単純計算だが返還率は73%。同じ計算法で56%だった開高の時代を大きく上回っており、データベース管理の精密化などの恩恵もあるのだろうが、開高が「東京は性悪説より性善説を信じて良い街であり、正直な人の数は想像以上に多い」と書いた言葉は裏切られていないどころか、更に性善説の街へと邁進したことになる。

 しかし、このフォーメーションはがらりと変わる可能性がある。 ・・・ログインして読む
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筆者

武田徹

武田徹(たけだ・とおる) 評論家

評論家。1958年生まれ。国際基督教大大学院比較文化専攻博士課程修了。ジャーナリストとして活動し、東大先端科学技術研究センター特任教授、恵泉女学園大人文学部教授を経て、17年4月から専修大文学部ジャーナリズム学科教授。専門はメディア社会論、共同体論、産業社会論。著書に『偽満州国論』、『流行人類学クロニクル』(サントリー学芸賞)、『「核」論――鉄腕アトムと原発事故のあいだ』『戦争報道』、『NHK問題』など。

 

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