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ゴーン事件で問われた、日本国民全体への人権侵害

海渡雄一 弁護士・日弁連刑事拘禁制度改革実現本部本部長代行・ 日弁連国際人権条約ワーキンググループ座長

拡大保釈後、車で都内を移動するカルロス・ゴーン被告=2019年3月6日午後8時12分、東京都千代田区

第1 海外メディアは何を問題にしているのか

 3月5日、日産自動車前会長のカルロス・ゴーン氏に対する東京地裁の保釈決定がされ、6日には保釈された。逮捕から108日目の保釈である。本稿は、カルロス・ゴーン事件の罪に問われている事件の内容について論評するものではない。ゴーン氏に対する捜査と自由拘束のあり方が、国際的な人権基準から見て、どのような問題点があるかについて論ずるものである。まず、事件の経過を振り返る。

 ゴーン氏は、まず、昨年11月19日に金融商品取引法違反事件の容疑で東京地検特捜部に逮捕され、東京拘置所に拘置され、12月10日に起訴された。次に、同一の被疑事実の別件の容疑で12月10日に再逮捕され、この件では、検察官の勾留延長申請が12月20日に却下された。さらに、特別背任事件の容疑で、12月21日に再々逮捕され、この事件については本年1月11日に起訴された。

 その後、ゴーン氏は二度にわたり、保釈申請したが、1月15日と1月22日の二回にわたり保釈請求が却下され、東京拘置所における拘置が継続されてきた。今回の保釈請求は2月28日に請求され、3月5日に保釈が許可され、検察官による準抗告も棄却され、6日に、ゴーン氏は自由の拘束を解かれ、保釈された。

 ただ、この保釈には10億円の保釈保証金を積むほか、①日本国内に居住し、住居の出入り口に弁護士が監視カメラを設置する②海外渡航を禁止し、パスポートは弁護人が管理する③日産幹部ら事件関係者との接触を禁止する④パソコンや携帯電話の使用を制限する、などの厳しい条件が課されているという。

 1月には、フランスのマクロン大統領は安倍首相に対し、「ゴーン氏に対する拘禁はあまりに長く、厳しすぎる。仏市民を、品位を持って取り扱って欲しい」と要望していた。複数のフランス人弁護士から、このような身柄の拘束は自由権規約に違反するとの声明が公表された。ゴーン氏の妻が、国連の人権理事会の恣意的拘禁ワーキンググループに、通報を行ったことも伝えられていた。多くの海外のメディアが、ゴーン氏に対する保釈が認められず、このような長期の身柄拘束がなされ、取り調べが継続されてきたこと、取り調べに弁護人の立ち会いが認められていないことなどを取り上げ、人権侵害であると批判した。

 ここで、注意するべきことは、海外のメディアは、日本の実務がフランスと異なるからとして抗議していたのではない。日本の捜査実務が確立した国際人権基準に反すると主張しているのである。したがって、この問題はゴーン氏だけの問題ではない。

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筆者

海渡雄一

海渡雄一(かいど・ゆういち) 弁護士・日弁連刑事拘禁制度改革実現本部本部長代行・ 日弁連国際人権条約ワーキンググループ座長

1955年生まれ。81年弁護士登録。2010~12年日本弁護士連合会事務総長。NPO法人監獄人権センター代表。著書に「監獄と人権」(1995 明石書店)、「監獄と人権2」(2004 明石書店)、「刑務所改革」(2007 日本評論社 菊田幸一と共編)など。