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沖縄県民投票への閉塞感を破った一本の電話(下)

5市の不参加問題を動かした元山氏のハンスト

辰濃哲郎 ノンフィクション作家

 沖縄県の辺野古新基地建設の是非を問う県民投票に、5市が不参加を表明したのは年末から年始にかけてだ。「辺野古」県民投票の会は、5つの自治体の市長や市議会議員に面会して参加を求めるなど奔走したが、事態は動かない。窮地に陥っていた県民投票の会の元山仁士郎代表(27)が、若い世代の仲間にハンストを決行することを打ち明けたのは、このころだ。副代表の安里長従(あさと・ながつぐ)氏(47)が、元山氏からハンストをしたいと電話をもらったのは、決行2日前の1月13日だったと記憶している。

 安里氏は反対した。ハンストは自分に対する暴力だ。それを相手に示して訴えるのは、暴力を手段とした抵抗運動だと考えたからだ。

 だが、電話の向こうで、いつも沈着冷静な元山氏が珍しく気色ばんだ。

 「じゃあ、何ができるって言うんですか!」

 元山氏は、よほど切羽詰まっているのだろう。意思は固かった。

 「そこまで言うなら、わかった」


筆者

辰濃哲郎

辰濃哲郎(たつの・てつろう) ノンフィクション作家

ノンフィクション作家。1957年生まれ。慶応大卒業後、朝日新聞社会部記者として事件や医療問題を手掛けた。2004年に退社。日本医師会の内幕を描いた『歪んだ権威』や、東日本大震災の被災地で計2か月取材した『「脇役」たちがつないだ震災医療』を出版。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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