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いまも暴力団員をしている理由(上)

進む二極化、「あと数年で消える」というあきらめも

小野登志郎 ノンフィクションライター

 警視庁の暴力団を取り締まる組織犯罪対策部の刑事は、こう言います。

「暴力団、反社なら、なんでもどんな理由を付けてでも、しょっ引き(逮捕)ますよ。キャバクラで大声出したら、逮捕。電車の中で揉めて一般人の襟首掴んだら暴行罪。一般市民ならもちろん逮捕までしないケースですけど、暴力団は別。『看板料』ですよ」

 現在の日本の警察には、暴力団員に対しては、何をしてでも逮捕、壊滅したいという強い意思があり、その実績があります。

 暴力団の看板を出すことで、一般市民が怖いと思う時代はとうの昔に去りました。看板を出してきたら、脅されたら、一般市民は警察にすぐに通報すれば事は済みます。暴力団の看板が通用するのは、どんどん狭くなっていっている同じ世界に住む暴力団員だけでしょう。

 暴力団への世間の風当たりがいや増しに強くなっていくだけの昨今、なぜ未だに、暴力団員は暴力団にしがみつくのか、わたしは不思議に思っています。

 確かに、2011年に暴力団排除条例が全国の自治体で施行されて以降、暴力団に所属する組員の数は年々減少しています。

 警察庁組織犯罪対策部組織犯罪対策企画課がまとめた『平成29年における組織犯罪の情勢』によると「暴力団構成員の数は、16800人、準構成員等の数は、17700人といずれも昭和33年以降最少人数」を記録しており、暴排条例による暴力団関係者の社会的排除策は確実に効果を発揮していると言えます。

繁華街のビルに掲げられた「暴力団員立入禁止」の標章=2015年11月25日、北九州市小倉北区
 警視庁が実行した北九州市を拠点とする工藤会の殲滅作戦を見るように、暴力団の取り締まりに対する警察の意欲は並々ならぬものがあります。先述したように、警視庁の組対関係者は「暴力団員は、どんな罪でもいいから引っ張ってこい」と発破をかけられています。もう、暴力団員に人権は無いと言っても過言ではありません。映画の中で刑事が発する「路上駐車でも立ち小便でもなんでもいいから引っ張ってこい!」というセリフそのままの状況が、リアルで続けられています。

 警察による苛烈な取り締まりの強化は工藤会の殲滅作戦だけではなく、2015年の六代目山口組の分裂でも好機と捉えられ、暴力団対策は進められてきました。

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